もう引き返すことはできないのか? ネットとメディアの関係上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(1)(3/4 ページ)

» 2010年01月12日 11時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

クリーンヒットを飛ばしても観客が誰もいない

Twitter社会論〜新たなリアルタイム・ウェブの潮流 』(著・津田大介氏、洋泉社)

上杉 評論家の立花隆さんが『インターネット探検』という本を書かれたのは1996年。しかし立花さん自身、いまだに手書きで原稿を書いていますから。

小林 当時、WIREDで取材したときには、作家の村上龍さんもインターネットを利用していませんでした。「それはいいよ。分かっている奴に任せるよ」みたいな感じで。そのあと、インターネットについて熱く語っていたので、思わず失笑しましたね。

上杉 インターネットに関することを書きながら、実は自分はあまりしていない……といった人は多い。

小林 僕のなかでは、大前研一さんや堀紘一さんらがインターネットに関することを書き始めたので「(ネットが)エンドユーザーまで届いてきたのかな」と思った瞬間でしたけど(笑)。

上杉 多くの人は、大前さんが書いていることは「先端の先端のこと」といった感じで受け止めているのでしょう。しかし小林さんのように早くからインターネットに携わっている人からすれば、「遅いなあ」と感じるのかもしれませんね。

小林 そうですね。よく知られた名前の著者がインターネットのことを書くようになったときには「キャズムは超えて、アーリーマジョリティが使い始めている」――といった感じでしたから。仲の良い編集者によれば、「(書籍の著者としては)天然の振り遅れバッティングのほうがホームランを打てる」そうです。つまり普及しつつあるころから、意図的に遅れて「これはすごい!」ということを喧伝する人より、もともと見逃していて、あとから遅く気付いて本気で打ってくる人のほうが、大衆との接点を持ちやすいと。僕は先に本気で打ちにいくので、クリーンヒットを飛ばしても観客が誰もいない(笑)。

上杉 絶妙の例えですね(笑)。そのほかにインターネットを早くから使い始めていた人はいますか?

小林 さあ(笑)。紙メディアでブランドネームになっている知識人は、割と出遅れる傾向が強いでしょうね。最近、Twitterを使って話題の経済評論家の勝間和代さんは、津田大介さんが書いた『Twitter社会論〜新たなリアルタイム・ウェブの潮流 』という本の巻末に収録された著者との対談を読むと、昔からPCを使いこなしていたようですね。彼女が話している内容から判断して、従前よりのアクティブユーザーという印象を受けましたが、あれだけ著作がおありなのに、ネットについてほとんど本を著していないですね。

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