コラム
» 2010年01月06日 08時00分 UPDATE

松田雅央の時事日想:古きよき終着駅も通過駅へ――欧州の鉄道事情 (1/3)

欧州の大きな駅で、よく見ることができる「終着型駅」。発着本数が少なかった昔は問題なかったが、現代の交通システムには向いていない。そこで「通過型駅を造ろう!」といった動きも出ているが、反対意見も多いようだ。

[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 ドイツ南西部、バーデン・ヴュルテンベルク州の州都シュトゥットガルトは、メルセデス・ベンツやポルシェの本社工場を抱える「自動車の街」だ。自動車産業は世界不況の直撃を受けたが、今も同州とシュトゥットガルトの基幹産業であることに変わりはない。

 地理的にみるとシュトゥットガルトは「欧州のヘソ」の位置にあり、700キロメートル圏内にはドイツ全土に加え、フランスの3分の2、スイス、イタリア北部、オーストリア、オランダ、デンマークなど欧州の主要経済圏が含まれる。

 欧州における人とモノの中継拠点として発展が期待されるシュトゥットガルトであるが、長年の懸案となっていたのがシュトゥットガルト中央駅(以後、中央駅)の近代化と鉄道輸送力のアップだ。シュトゥットガルトが「欧州の新しいハート」となるためには中央駅の総合開発が不可欠とされ、1993年に開発プロジェクト「シュトゥットガルト21」が発表されている。

 その骨子は3つある。1つめは地上にあるホームを地下化し「終着型駅」を「通過型駅」に造り変える。2つめは中央駅−ウルム駅間の線路を高速鉄道用に新設する。3つめは中央駅周辺に生じる空き地の再開発だ。総工費40億ユーロの巨大プロジェクトは1990年代後半からの景気後退により実施が延び延びとなっていたが、このほど事業主体であるドイツ鉄道(DB)、州、連邦(国)、関連自治体の合意が成り、正式なゴーサインが出された。

yd_matuda1.jpgyd_matuda2.jpg 欧州におけるシュトゥットガルトの位置(左、出典:Stuttgart21, Stuttgart)、プロジェクトのロゴ「欧州のハート」(右、出典:TURMFORUM Bahnprojekt Stuttgart‐Ulm e. V.)

終着型から通過型へ

 現在、ドイツ鉄道のホーム16本はすべて地上にあり、1日当たり長距離列車が約160本、近距離列車が約400本発着している。ドイツ鉄道とは別に都市鉄道(S-Bahn)も中央駅を使用しており、こちらは地上ホームと地下ホームの両方を使っている。都市鉄道の発着数は1日当たり650本にのぼり、駅全体の利用者数は1日約24万人に達する。

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