激安商品、政権交代、雑誌の休刊ラッシュ――2009年、日本はこう変わった(Business Media 誠編)誠トレンド格付2009(2/2 ページ)

» 2009年12月29日 00時51分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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給料が減るからデフレになる?――給与減・ボーナス減

 日本のサラリーマンの平均年収は、ずるずると減少を続けています。企業が生き残るために、正社員の採用を減らし、派遣社員やパート、業務請負などで低コスト化を進めたこの10年。特に若い世代が多い誠の読者では、かつての年功序列制度の下では常識だった「年齢が上がれば給与も上がる」が夢のように思える人も多いのではないでしょうか(私もその1人ですが……)。

 今年は給与減のトレンドに加え、ボーナス減のニュースも目立ちました。誠でも、給与減、ボーナス減の話題はよく読まれています。企業の業績が回復しても、給与が上がらなければ好景気を実感できず、個人の消費意欲は上がりません。収入が増えないから安いものしか買わない。安いものしか売れないから企業の業績が上がらず、そこで働く人の給与が増えない――1位の「激安商品」と、この給与減・ボーナス減トレンドが対になり、スパイラルとなっているのが現状です。

デフレ時代のヒット商品――エコカー、PB商品、1000円高速

 そんなデフレ時代にも、ヒット商品は存在します。

 3位「エコカー」や特別賞「PB商品」は、「この値段だから売れた」というもの。エコカーで燃費節約、PB商品なら同種の正規メーカー品よりも割安、といった生活防衛意識が強く働いた1年だったと言えると思います。“デフレ”“値段の割りにいいもの”といったトレンドは、2010年にも引き継がれそうです。

 デフレが進めば「タダ」は最強のキーワードになり得ます。「タダより怖いものはない」とは正反対の「無料だからこそ、コンテンツは最高品質になる」「それでもユーザーはお金を払いたがる」というフリーミアムの考え方が話題になったのも今年の出来事。無料でおかきやコーヒー・ジュースを楽しめるカフェも話題になりました。

 タダではないですが、限りなくタダに近い金額で成功したといえるのが「1000円高速」。今年は「定額給付金」「エコポイント」などの消費刺激策を政府が打ち出しましたが、その中でも一番の効果があった施策と言えるのではないでしょうか。

 2008年の原油価格高騰でクルマの利用者が減ったことから一転、1000円高速の施行以降は、週末の高速道路は大変な混雑でした。ほかの交通政策との兼ね合いもありますが、高速料金をタダに近い値段にしたことで、「週末、クルマで遠出しようかな」という新しいニーズを作り出した点は評価してよいのではないでしょうか。「人が動く、モノが動くのは経済の基本。『1000円高速』というネーミングもよかった」(土肥)

「科学と学習」や「小学○年生」も――雑誌の休刊ラッシュ

 2009年はさまざまな雑誌が休刊になった年でした(Fujisan.jpの休刊雑誌一覧、参照リンク)。また、出版社倒産のニュースも相次ぎました。

 特に「学習と科学」(学研)と「小学○年生」(小学館)の休刊は、編集部周辺でもショックを受けている人が多かったです。「思い出がなくなるようで悲しい。毎月、雑誌が送られてくるのをワクワクして待つ、この感覚を味わえない小学生というのは少しかわいそう」(土肥)

 休刊の理由として挙がるのは「少子化が進んで市場が縮小した」が多いですが、実際に小学生の子どもを持つ親に聞くと、こういった雑誌がほとんど話題になっていないといいます。「細々と生き長らえていたのが、とどめを刺されたのでは」(堀内)という厳しい意見もありました。

 子ども向けだけではなく、主に団塊世代をターゲットとする週刊誌も厳しい戦いを強いられています。人気週刊誌の編集長が集まった「週刊誌サミット」のレポート記事は、誠でもたくさんのページビューを獲得しました。

 2009年は酒井法子氏の薬物事件や政権交代など、週刊誌が得意とする大きな話題が相次いだのでそこそこ売れたとはいえ、いずれの雑誌も生き残る方法を模索中です。取材した土肥記者によると、「一番話が面白かったのは週刊大衆の編集長」とのこと。

 この記事に出てくる「たぶん今の週刊誌は、人々のサイズに合わなくなってきていて、メディアとしてほかのものにとって変わられようとしているのだろう」という言葉に、現状が集約されているのではないでしょうか。実際、電車に乗って周りを見回しても、最近は週刊誌を読んでいる人をほとんど見かけません。これら週刊誌については、編集部の中でも「娯楽として、手に取りにくい」「中吊りで興味がある話題があっても、実際に手にとってレジに持っていくとなると恥ずかしい」という意見も出ました。

 紙には「読みやすい」という大きなアドバンテージがある半面、検索が難しい、気になった情報をその場で調べにくい、保存すればかさばるといった弱点もあります。紙より便利なものが出てきたなら、媒体は変えるべきではないか? そう考える誠編集部としては、「電子書籍が週刊誌を救う」という意見には賛成です。

 筆者が個人的に注目しているのは、「食べレコ」というiPhone用アプリ。無料アプリをダウンロードしておくと、アプリからグルメ雑誌の特集のリストを見ることができます。この中から気になった特集だけお金を払って読む仕組み※。雑誌に使われた写真とテキストをiPhoneで読みやすい形に編集してあるため、ほかの雑誌コンテンツに多いPDFや画像を閲覧するものよりもかなり読みやすい点がメリットです。

※特集の価格は無料〜450円

 紙の辞書は売れなくなっても、電子辞書はよく利用されています。雑誌にも使い勝手が良いモノができれば、流れが変わるのではないでしょうか。雑誌、書籍、辞書といった従来のパッケージで売れなくなっても、コンテンツ自体のニーズは変わらないはず。「食べレコ」で読める特集はグルメ系コンテンツだけですが、この形が雑誌一般に広がっていけば、出版社のビジネスは新展開を迎えるのではないか? と期待しています。

よいお年を!

 景気低迷は慢性化し、消費者の節約消費が続いていますが、その中でも新しい形のビジネスやヒット商品は少しずつ生まれています。

 誠の読者層の中心である20代〜30代の世代は、2010年もトレンドを引っ張っていくはず。読者のみなさんとともに、誠も引き続き成長していきたいと思っています。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 →誠トレンド格付け2009:Twitter、iPhone 3GS――2009年、あなたの仕事に影響を与えたものはこれだ!(誠 Biz.ID編)

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