ビジネス界で「沸点が高いな〜」と驚愕させられるのは、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正社長です。2002年に社長を退いたのに3年後には復帰し、当時4000億円の売り上げを5年後に1兆円にすると宣言。今は7000億円強の売り上げですが、これを2020年までに5兆円企業にするという新たな目標を掲げていらっしゃいます。
満足の沸点の高い人は、求めるスピードが非常に速いです。なぜなら人生は有限なので、同じ期間で高い点に到達しようとするとスピードを速めるしかないからです。一瞬たりとも立ち止まらずスピードを緩めず走り切る必要があります。
後継者として指名した玉塚元一前社長が、2005年に柳井氏と袂を分かちユニクロを去ることになったのは、柳井氏の満足沸点の高さ、そして、それ故に求められるスピードについていけなかったからでしょう。方向性が同じでも、満足の沸点が違うと、人は一緒にやっていけないのです。
ところで、ユニクロの売り上げで1兆円というのは、どういう数字でしょうか。
平均商品単価を仮に2000円として考えてみると、1兆円÷2000円=5億個となります。これを日本で売ろうとすると、7歳以上70歳未満の人口である1億人が、1人平均で年間5個の商品を買うという計算になります。
ユニクロの商品はとても品質がいいので3年間は着られるとすると、1人当たり15枚のユニクロ商品を持つこととなり、夫婦2人で子どもが1人なら45枚のユニクロ商品が自宅に存在する計算になります。
3年以上着る人がいたり、商品の単価が2000円より安かったりすると、この数字はもっと大きくなります。また、今は7歳以上70歳未満の1億人が全員買うと仮定しましたが、実際には1枚も買わない人もいます。買う人が半分になるなら、10点以上のユニクロ商品を毎年買い続けてくれないと売り上げ1兆円は達成できません。つまり、日本だけでカジュアル衣料単一商売をやっていては限界は明らかなのです。そこでユニクロでも次の展開が始まっています。
夢はどでかい会社ですが、やっていることは突飛なことでも何でもありません。しかし、こういう「しごく当たり前のまっとうな商売」を大規模に行うと、「当たり前のことが得意」な人たちが会社に集まり始めます。そして、そういう人たちの満足の沸点は、そんなに高くないのです。
すると、組織の中に「今年も増収増益でよかった」と満足したり、新規事業でも「利益が出て良かった」「累損が一掃できてよかった」と喜んだりする人が出てきます。
人並み外れて満足の沸点が高い柳井社長には、そういうことは許せないでしょう。「そんなレベルで満足していてどうするのだ?」と。
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