NIKEフラッグシップストア原宿が目指す「店舗2.0」(2/3 ページ)

» 2009年12月18日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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「個」に向けたサービス

 同様のコンセプトは業界や業種の垣根を越えて、さまざまな形で具現化されている。例えば、「『スタバ打倒』のカギは『個』のサービス――独立系コーヒーショップの挑戦」で紹介した、インテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティー(ロサンゼルス)は、顧客とバリスタの「個」の触れ合いを付加価値として位置付けたコーヒー・ショップだ。ここでは、各バリスタが担当カウンターを持ち、顧客1人1人を個別に接客する。顧客の好みやムードなどを考慮して、ドリンクやお菓子などをすすめてくれるのだ。

インテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティー公式Webサイト

 また最近、日本ではユニクロ(ジーユー)やイオンがジーンズを巡って熾烈(しれつ)な価格競争を繰り広げているようだが、その一方、米国ではフルカスタムのジーンズ・ショップなどもお目見えしている。生地や型、ポケットの形などディテールが選べ、ぴったりと自分の身体にあったジーンズを仕立ててくれる。気になるお値段は400ドルくらいだ。

 「仕立て屋さんだったら、昔からあった」という人もいるかもしれない。だが、もともと米国におけるジーンズの位置づけは、「ワーク・ウェア(労働の服)」である。仕立てとは無縁であるはずのものなのだが、そこを逆手にとって差別化を図っている、というところが面白いと私には思える。

 ネット初期の1990年代後半から2000年にかけて、「ワン・トゥー・ワン」という言葉が流行した。ネット・ショッピングは、ショッパーの「個」とWebサイトが1対1で向き合う仕組み。その特徴を生かして、顧客の望みの仕様に合わせて商品をカスタマイズするビジネス・モデルやサービスが続々登場した。前述のNIKEiDも、もとはといえばWebサイトで先行したカスタマイズのサービス。そのほかにも、プロクター・アンド・ギャンブルがかつて展開した化粧品のカスタマイズ・サイト「Reflect.com」など、「マス・カスタマイゼーション」をキーワードとしたWebビジネスの例は挙げ始めたらきりがない。

 興味深いのは、Webが当たり前になった世の中で店舗が変革していくに当たって、ひところはWebの利点を活用したサービスだと思われていた「カスタマイズ」=「個」に対応するサービスが、新しい時代に向かう店舗の存在意義として取り入れられ、研ぎ澄まされる傾向にあるということだ。

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