深夜2時までチェックインOK――ホテル五龍館のお客さま視点(1/2 ページ)

» 2009年12月17日 08時00分 公開
[小野寺洋,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:小野寺洋(おのでら・ひろし)

1973年佐賀県生まれ、佐賀大学理工学部卒。大学卒業後、出版社に入社。2005年から株式会社JIMOSで自社通販ノウハウを元にしたダイレクトマーケティング支援事業を行う。


 昨今の不況や新型インフルエンザの影響で、旅行業界に元気がない。

 日本旅行業協会が発表している「旅行市場動向調査」によると、旅行業の景気動向指数は2年前から連続して下降が続いている。シニア層の旅行機会は改善の兆しがあるものの、ファミリー層やOL層などは、まだ横ばいのまま低迷中だ。

 一方、お客さま側の旅行ニーズとしては、比較的低価格でこぢんまりと楽しめる「日帰り旅行」や「1泊2日の近場ツアー」派が増えているという。

 近場旅行といえば思い浮かぶのが、東京の「はとバス」。はとバス広報担当の方に聞いてみると、「ここ3年ほどは売り上げ好調」とのこと。やはり、お客さまの最新ニーズに合わせて、自在にツアー内容を組み替えられるのは、はとバスの強みになっているようだ。そして、その組み替えに対応できる添乗員の「実行力」も忘れてはならない重要な要素の1つである。

はとバス公式Webサイト

「チェックイン」だけでも差をつけられる!

 さて、そんな旅行市場で、ユニークなアイデアでお客さまを呼び込んでいるホテルがあることをご存じだろうか?

 スキーの名所、あるいはオリンピックのジャンプ台で有名な、長野県白馬村にある白馬八方温泉「ホテル五龍館」がそれだ。このホテルの強みは、はとバス同様、お客さまのニーズをつかんで、ビジネスとして確実に実行に移しているところ。

ホテル五龍館公式Webサイト

 例えば、最終チェックインの時間がユニークだ。一般の“リゾートホテル”では、遅くとも24時くらいまでにはチェックインしなくてはならないのに対し、このホテルでは金曜の夜は深夜2時までチェックインを受け付けてくれる。

 実はこれ、仕事が終わった金曜日の21時30分に、クルマで東京や名古屋を出発しても、チェックインに十分間に合う計算(片道3.5〜4時間程度)になるのだ。Webサイトを見ると、社員のコメントでその理由が次のように書かれている。

五龍館で働くまでは会社員で仕事が終わって出発し、夜中にスキー場に到着して車で寝て滑ってました。でも、いざ、滑るとなると、体がだるくて思うように滑れない。怪我をしそうになりました。お客様からは金曜の深夜2時まで待ってくれたら夜中に着けるんだけど・・・と沢山の声を頂いておりました。お客様とボクの体験をもとに、金曜は深夜2時までお待ちします。高速1000円(ETC割引)も利用下さい(ホテル五龍館公式Webサイトより)

 完璧である。「深夜2時までチェックイン可能」という言葉を出すだけなら、どこのホテルでもできるだろう。だが、この告知の仕方の良いところは、「なぜチェックイン時間を深夜2時まで延長したか」という理由を明確にターゲットを絞って伝えているところにある。しかも、お客さまのインサイト(潜在的な欲求)に十分に応える形で。

 また、告知のすぐ後には、具体的なクロージング(宿泊予約提案)も用意。次の2つのプランを用意している。

1.金曜の深夜に到着 → 土曜に滑って帰る=1泊朝食プラン

2.金曜の深夜に到着 → 土曜に滑る → 日曜も滑って帰る=2泊3食プラン

 金曜の深夜に到着するっていいなあ〜と思ったお客さまに、余計なことを考える間を与えないクロージングの早さなのだ。

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