駅までクルマ、電車に乗ると駐車料金が安くなる――パーク&ライド成功の秘訣とは?神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年12月16日 16時04分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

交通ICカードの乗降履歴活用で実現したサービス

パーク24事業企画本部 技術開発室長の岩渕泰治氏

 本題に入る前に、パーク24のパーク&ライドサービスについて振り返っておこう。

 パーク&ライドとはその名のとおり、駅周辺の駐車場にマイカーを駐車し、電車など公共交通に乗り換えるサービスのこと。郊外から都市部に直接クルマが流入することを防ぐことで渋滞や大気汚染を防ぎ、同時に公共交通の利用促進を行う。一方、ユーザー側には「公共交通に乗り換えたこと」に対して、料金割引などのインセンティブを提供するというものだ。

 パーク24のパーク&ライドでは、この「駐車場」と「公共交通」のサービス連携に、Suica / PASMOなど交通ICカードを用いているのが特徴だ。詳しくは過去のレポートを参照していただきたいが、同サービスでは、ユーザーが駐車場の精算時に“駅で降りる時に使った交通ICカード”を精算機にかざし、カード内に保存された駅利用履歴を読み取ることで「クルマから電車に乗り換えた」と判別。駐車場の利用料金を一定額割引している。

 「パーク&ライドサービスの実施には、『駅近くにパーク24の駐車場があること』と『その駐車場に1日最大料金が設定されていること』が大前提になります。パーク24ではパーク&ライドを実現するシステムや設備をすでに持っています。ですから、この前提条件をクリアした上で、鉄道会社様とサービス連携の提携ができれば、その駐車場でパーク&ライドサービスが実施できます」(岩渕氏)

現在48カ所で対応。利用率40%以上の駐車場も

 パーク24では2007年頃から交通ICを用いたパーク&ライドサービスの取り組みを行っており、現在の仕組みは2008年4月に東武鉄道と商用化したPASMO連携型のパーク&ライドサービス(参照記事)が雛形になっている。その後、同社のパーク&ライドサービスは「鉄道利用の促進、利用者の増加に貢献する」(鉄道会社幹部)と認められ、全国に広がっていった。2009年には国土交通省の日本鉄道賞特別表彰も受賞したという(プレスリリース)

 「現在、パーク&ライドサービスは全国48カ所で、鉄道会社8社と連携して実施しています。利用率が高いところでは40%を超えています。また各鉄道会社の交通IC電子マネー利用の促進にも貢献しており、例えば最初期の事例である東武鉄道幸手駅のパーク&ライド対応駐車場では、(決済の)55%がPASMO / Suica電子マネーになっています」(岩渕氏)

 さらにパーク&ライドの実施は鉄道会社のビジネスに大きく貢献するだけでなく、駐車場サービスを提供するパーク24にもメリットがあると、岩渕氏は話す。

 「パーク&ライドの料金割引では、原資は我々が負担しています。しかし、パーク&ライドを実施すればその駐車場の利用件数が伸びるだけでなく、(パーク24の)『タイムズ』駐車場のブランド認知度向上につながる。さらにパーク&ライドを非利用時もタイムズを選んで使っていただけるようになるのです。この効果はとても大きい」(岩渕氏)

 岩渕氏によると、コインパーキングの利用者は利用料金も気にするが、それ以上に駐めやすさを重視し、「使い慣れた場所にある駐車場」や「使い慣れたブランドの駐車場」を選んで利用する傾向があるという。このブランド訴求や囲い込みに、パーク&ライドが貢献しているのだ。

 「実際に利用傾向で見ますと、パーク&ライドを利用するお客様は、『12時間以上の駐車』をする通勤ユーザーと、『4〜5時間程度の駐車』をするお買い物利用のユーザーに大きく分かれますね。特に後者は電車に乗り換えた先にある商業施設との連携など、(鉄道連携よりも)さらに踏み込んだサービス開発の可能性があると見ています」(岩渕氏)

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