日本からもツアー客が訪れる、レトロなクリスマス市松田雅央の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年12月15日 08時10分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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レトロが人気

 そこで注目されているのが、昔を再現したレトロなクリスマス市だ。時代は自由に設定できる。例えばドレスデンのレトロなクリスマス市は20世紀初頭をテーマとし、屋台の看板から飾り付けまで統一感を持ってコーディネートされている。日本に例えれば、さながら「明治時代の雰囲気を持ったテーマパーク」のようなものだろう。

 筆者が住むカールスルーエ市ドゥーラッハ地区の広場で数年前から開かれているのは中世をモチーフにしたクリスマス市だ(関連リンク)

 グリューワインの飲める屋台は中世の酒場風。大道芸人が手品を披露し、所々に暖をとるためのマキがたかれている。店員はもちろんすべてのスタッフが中世の衣装をまとい、古風な言葉遣いをする念の入りようだ。

中世風クリスマス市のPRポスター(ドゥーラッハ地区、出典:Initiative “Durlacher fur Durlach”)
中世風の飲み屋(左)、手品を披露する大道芸人(右)

中世を体験

 出店は飲食店と手工芸の店が多い。運営者の職業はさまざまで、これをなりわいとする人もいれば趣味の参加もある。飲食店の場合は純粋に商売として店を出す業者が主になり、手工芸の店は「中世の催し物専門に出店する職人」「普段は工房で作業をしている芸術家」あるいは「愛好者団体」の場合もある。クリスマス市の呼び物となる伝統工芸品のデモンストレーションや工芸品教室は収益を上げるためのものではなく、その運営費は主催者(市)が支払ってくれる。

 炭とふいご(金属などを加工するとき、火力を強めたりするのに使用する送風装置)を使い小物のナイフを作る写真の鍛冶屋は、こういった催し物でのデモンストレーションをなりわいとし、毎年十数カ所、全国各地に店を出しているそうだ。「必ず中世のコスチュームを着るのですか?」と聞いたところ「これはコスチュームじゃないよ、仕事着さ(笑)」。彼は自分の履く木靴を指差し「ハンマーを落としてもケガしない安全靴を履いているよ」。その隣では、やはり中世の衣装を着た女性が鉄片にイニシャルを刻印してネックレスを作り販売していた。彼女の本業は幼稚園の先生で、ここには手伝いとして来ているそうだ。

中世の鍛冶屋

木製の弓と矢を作る職人の出店(左)、中世の鎧や剣の愛好者団体の出店。来客者に鎧を着せているところ(右)

 読者の皆さんもクリスマス時期にドイツ、オーストリア、スイス、フランス・アルザス地方を訪れる機会があれば、ぜひレトロなクリスマス市を訪れてほしい。普通の観光では味わえない、ヨーロッパの新たな一面を発見していただけると思う。

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