広告シーンを変える“キャラクター”起用の現状(3/4 ページ)

» 2009年12月10日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

人気キャラクターが定番化

陸川 私の方では、キャラクタービジネスの現状についてお話しします。下図はキャラクター商品の小売市場規模の推移です。2000年以降、1兆6000億円〜1兆7000億円の間で推移してきたのですが、2003年の1兆7000億円をピークに年々微減傾向にあって、2008年には1兆5406億円という規模になっています。

 この金額が多いか少ないかということですが、業界的には「非常に厳しい」と言われています。この背景にあるのが「マスから個へ」というメディア環境の変化で、そうした流れの中、マス的なキャラクターが育成しずらくなっているということがあります。また流通でも、量販店中心のマーケットになってきているので、定番キャラクターしか棚に並ばない状況になっています。そのため、これはコンテンツビジネス全般でそうなのですが、キャラクタービジネスでも寡占的な市場環境になっているということが注目されます。

キャラクター商品の市場規模推移

 下図は購入金額から見たキャラクターランキングということで、上位20位のキャラクターのランキングです。トップは3年連続でポケットモンスターになっていて、2008年のランキングを見ると、アンパンマンやリラックマが上がってきています。しかし、上位20位で比較すると、顔ぶれは何年も変わっていないという状況です。キッズ層では定番キャラクターに人気が集中している一方、大人層ではライフスタイルや価値観が多様化する中で支持されるキャラクターは分散傾向にあるという状況も見られます。

購入金額から見たキャラクターランキング

 先ほどの鷹野さんのデータに対応するような感じになりますが、2009年にどんなキャラクター起用CMがあったのかを業種別で調べてみました。

 食品を見ると、オリジナルのキャラクターが多いですね。昔からあるようなキャラクターも並んでいますが、今年だと「たけ里ブラザーズ」(明治製菓「たけのこの里」)のような新キャラクターも結構出てきています。「ガリガリ君」(赤木乳業)でもそうなのですが、最近ではライセンスビジネスとしてオリジナルキャラクターを展開して利益を得ながら、広告効果も高めていくという戦略がとられるようになっています。特にこれは食品分野で顕著な傾向になっています。

 飲料やエネルギー・素材・機械、家電・AV機器などでも、オリジナルのキャラクターが多いですね。一昔前だと、エネルギー・素材・機械の業種では大体、既存のキャラクターを使っていたのですが、新日本石油の「エネゴリくん」のようにオリジナルのキャラクターにシフトしていますね。それは広告費が厳しくなっていることで高い契約料の既存のキャラクターを使えなくなっているとか、承認作業に時間がかかるとか、世界観に合わないと使いにくいといったことがあって、こういった業種でもオリジナルのキャラクターが増えてきているのかなと思います。

 化粧品・トイレタリー、薬品・医療用品でもオリジナルのキャラクターが多いですね。紙おむつ分野は、下表ではディズニーキャラクター(ユニチャーム「マミーポコパンツ」)しか書いていませんが、ネピアではアンパンマンを使っていたりと、全部と言っていいくらいみんなキャラクターものになっていますね。

 花王の「ハミングフレア」は、パッケージにキャラクターを描いているような商品を出しています。これは雑貨に囲まれて育ったようなF1※層に意識されるように、家事に癒やし的な効果を加えることを狙っていると担当者は話していました。

※F1……20歳〜34歳の女性のこと。

 最近の一番大きな傾向としては、クルマメーカーがこぞってキャラクターを使っているということではないかと思います。トヨタ自動車はヴィッツでリラックマを使うことによってリラックスシートの機能を訴求したり、日産自動車もノートで今は低燃費少女ハイジをやっていて、その前もゴールデンエッグスを使っていました。鷹野さんのお話にも出てきましたが、のってカンガルー(日産自動車)カクカクシカジカ(ダイハツ工業)のようなキャラクターを自動車メーカーが使い出しているなあというような傾向が見られます。

 情報・通信では、やはり地デジカ(日本民間放送連盟)が非常に目立っていますよね。それからアフラックのまねきねこダックも今、旬だと思います。

 先ほど素材全体から見た時にキャラクターを使用しているCMは7.5%しかありませんでしたが、こうしてすべての業種を見ていただくと、みなさんの記憶に残っているCMが非常に多いと思います。出稿量というのもあると思うのですが、やはりキャラクターの訴求力には非常に大きいものがあるという証明になっているのではないかと思います。

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