著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
きっかけはラスベガスのホテルでのポークチョップ(豚肉ロースト)だったという。
「そのポークチョップは端から端まで柔らかくて、皮にはパリッと焦げ目がついていました。こんなに美しいポークチョップを食べたことがなくて、私たちはそのレストランにどうやって調理したのか聞きました。すると“sous vide”だと言うのです」
そう語るのはイーデス夫妻(マイケル・イーデスさんとメアリー・イーデスさん)。感動した彼らはsous vide(スーヴィードと発音)、すなわち真空調理法に取り組んだ。調理してみると確かに味は良いが、水温管理が難しかった。しかも、調理器はプロ向けばかりで何十万もする高価なものしかない。とても一般人では手が出ない、誰でも真空調理ができるマシンがあればいいのに――。そこで夫妻が開発したのが、家庭用真空調理器「SousVide Supreme」である。
電子レンジ以来の最大の発明、“Sous Vide(真空調理法)”とは何か? 焼くでもなく、煮るでもなく、蒸すでもなく、レンジでチンでもないという。
そのマシンのアドバイザーには、英国の三つ星レストラン「Fat Duck」のオーナーシェフの名前があった。「私、一度Fat Duckに行きたいんです!」と、相棒かつ料理研究家のcherryさんがかつて言ったことを思い出す。
Fat Duckという人を食ったような名前が楽しい。オーナーシェフのヘストン・ブルメンタール氏は、iPodを乗せたプレートと魚介料理をサーブして、「魚を捕った海の潮の音を聴きながら食べてください」というような、料理を根底から変えるアイデアをテーブルに持ち込む。彼が関わることなら、そこにはきっと家庭料理を変える何かがあるはずだ。
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