朝日新聞の支局には、こんな雑誌が置いてあった(9)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(2/3 ページ)

» 2009年12月09日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

上杉 僕もマスコミの世界がダメになれば、また政治家秘書やホテルマンに戻ればいいだけだと思っていますから。それもダメなら、以前やっていたカラオケ屋の店長や居酒屋の店員、そちらの方に戻ってもいいし。

 でも多くの記者たちは、この世界でしがみついていますよね。

窪田 しがみついてしまうということは、結局、組織の方を優先することになるんですよ。きちんと給料をもらう生活に慣れてしまうと、再び出てくることが難しくなります。

朝日新聞岐阜支局で購読していた雑誌

月刊『第三文明』(2010年1月号)

上杉 あと記者クラブに慣れてしまっている人は、記者クラブがない外の世界で何をしていいのか分からない。長年、新聞記者の仕事を続けていると、ほかの職業に就くことが難しいのではないでしょうか。

窪田 「新聞記者って何でも知っている」といったイメージがあるかもしれませんが、実は世の中のことを知らない人は多いですね。

上杉 まず新聞を読まない人が多い。読んでいても、自分が担当する記事だけ。

窪田 朝日新聞の岐阜支局で働いているときに、上司がこのように言ったのです。「若い人があまりにも新聞や本を読んでいない。これからは支局の中に、雑誌コーナーを設けたから『週刊文春』や『週刊新潮』を読んでおくように」と。

上杉 ハハハ。

窪田 そこまでは、まだいいんです。で、実際に雑誌コーナーを見てみたら月刊『第三文明』が置いてあった(笑)。もちろん監視的に定期購読していればいいのですが、『週刊文春』『週刊新潮』と同じ棚に並べ、『第三文明』を読めというのはいかがなものか。『第三文明』の雑誌の内容を分かっていて定期購読していたのか、よく分かりませんでしたね……あの感覚は。

上杉 何も考えていませんよ、きっと。

窪田 朝日新聞に就職したときに、研修がありました。でも記者クラブに関しては、一文字も出てこなかったですね。

上杉 それは「記者クラブという問題はこの世に存在しない」ということになっているから。北朝鮮での「拉致」に等しいかも。

窪田 記者クラブに関する説明はこんな感じでした。「みなさんは記者クラブに行って、そこに幹事社というのがあって……以上で終わり」――。

 記者クラブの意義なり、会社としての考え方なりなどを話してくれるのかと思っていましたが、この問題に関しては完全にスルーでしたね。

上杉 テレビ局や新聞社の幹部から僕のところに連絡があり、このようなことを言ってきました。「記者クラブ問題の、落としどころはどこにあるのか?」と。各社で“上杉問題”が話し合われているということなのですが、僕はこのように答えました。「落としどころはないんですけど」と。

窪田 先ほど上杉さんが言ったとおり、彼らを役人だと思えばいい。もちろん「カチン」とはくるけれども、「まあ役人だからしょうがないか……」と感じられる。もちろん「しょうがないか」と思うことも、いけないのですが。

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