企業が“変節点”を乗り越えるにはちきりんの“社会派”で行こう!(1/2 ページ)

» 2009年12月07日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2006年8月9日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 変化のパターンには、「一定のペースでの連続的変化」と「突然のジャンプ」の2種類があります。「進化」と「変異」とも言えますね。

 人の一生は少しずつ背が伸びたり、次第に白髪が増えていくというような連続的変化と、初潮、出産、病気といった突然のジャンプの組み合わせで進みます。日本の歴史を見ても、経済成長や西洋化は連続的変化ですが、それ以外に戦争や開国など「突然のジャンプ」があり、非連続な変化も起こっています。

 そして、企業も段階ごとにいくつかの「変節点」を乗り越えて、非連続な変化を起こしながら成長、発展していきます。企業は発展していくに当たってどのような変節点があるのか、段階ごとに考えてみました。

1.自分“以外”の壁

 「1人でビジネスをやる」のと、「自分以外の人を雇う」のはまったく違います。1人なら好きな仕事を、好きなだけ、好きなやり方でやっても問題はありません。朝起きて「今日は休み!」と決めてもいいし、いつビジネスをたたんでも自分だけの問題です。しかし、誰かを雇えばその人への責任が出てきます。これは非連続な変化です。

2.社員数100人の壁

 これは「1人で管理できなくなる」規模です。数十人の会社なら、社長がすべての社員の採用面接をし、昇格の判断やボーナス評価を自ら行うことも可能かもしれません。しかし、100人を越えると、すべての人事を社長自ら決めるのは困難になります。

 すると「誰かに任せる必要」が出てくるのですが、創業社長にとっては「自分のほかに重要な判断をする人が出てくる」のはパラダイムシフトです。しかし、そういうことを任せられる仲間が見つけられないと、この壁は越えられません。

3.1000人の壁

 ここまでは「経営陣が適宜話し合って決めていく」というスタイルが可能ですが、ここからは「ルール」が必要となります。

 例えば役員報酬や管理職の給料。今までは個々人の能力や実績を勘案して「適宜判断」をしていても、このあたりからは“人事テーブル”など「組織のルール」が必要になります。そうしないと個別判断に手間がかかりすぎるし、「なぜあの人だけ?」という不公平感も出てきます。

 ルールができると、リーダーといえどもある程度はルールに従う必要が出てきて、例えば「自分が高く評価している部長だけを優遇する」といったことは難しくなります。「社長なのに、俺の会社なのに、なぜルールに縛られるんだ?」と思うことも出てくるでしょう。

4.1万人の壁

 いわゆる大企業への脱皮点です。この規模を超えると、「組織を維持するためのエネルギー」が、「ビジネスのためのエネルギー」と同等レベルで必要になります。巨象が自分の体重を維持するために食べ続けなくてはならないように。

 管理部門という「もうけるため」ではなく「組織を維持するための部門」に多くの人、多額の予算が必要となります。会計上の利益額も、経理(税金、減価償却、投資などの形態やタイミングの管理)、法務(契約形態。雇用形態の選択)によって大きく左右されます。

5.10万人の壁

 ここから先は「日本だけでは無理」です。日本は経済規模が大きいので、国内だけで通用する企業でも4番目の壁を突破することまでは可能ですが、世界市場で成功せずして10万人企業になるのは難しいと思います。例外は国鉄、電電公社などの流れを引く元公的組織のみでしょう。

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