筆者が「職務経歴書」を書き、プロに採点してもらった吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年12月04日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

「職務経歴書」について、総論を聞く

 今村さんには「職務経歴書」についての総論、そして各論を尋ねた。まずは、総論についてうかがった。

 「書き手の強い意思が感じられますね。例えば、“部下を育てていきたい”とか、“学ぶことができた”などと書かれてあります。エントリー者が入社後、どのような考えで仕事に臨もうとしているのかが伝わってきます。このように、自分の意思を伝えることが大切です。

 強い意思が感じられる職務経歴書は、いまは少ないのです。不況ということもあり、自分の意思をおさえて、控え目なことを書いている人が多いのです。その姿はいわば、会社に迎合しているかのように見えます。これでは、読み手にはその人の良さがなかなか伝わらないでしょうね」

 確かに会社は採用試験のときには「これからの人材は個性が大切」などと言う。しかし、本音はもっとおとなしい人を求めているのではないか。そのあたりを尋ねた。

 「企業の人事部は“いい意味でとんがっている人”を求めているのです。つまり、仕事に対しての責任感や考えなどがほかの人と違い、たいへん優れている人を採用したいと考えています。

 一方で、“悪い意味でとんがっている人”もいます。これは、上司を始め、周囲とどうもうまく関係を作ることができないような人を意味しています。こういう人は、なかなか採用されないタイプです」

「職務経歴書」について、各論を聞く

 次に各論について尋ねた。これは、箇条書きにして説明する。

(1)在籍した会社の社員数、所属部署の人数が書かれている。これは、とてもよい。読み手は働いている状況のイメージが湧いてくる。そうすると、どのような職場を経験してきたのか、判断しやすくなる。

(2)在籍した会社の社員数、所属部署の人数の下に、自らが取り組んだ仕事を書いている。その内容がいずれも具体的であり、どのような仕事をしてきたのか、イメージが湧いてくる。

(3)その下に「※」を設けて、仕事への関わり方、思いなどが書き込んである。それぞれが生きた表現になっていて、エントリー者の様子がよく分かる。

(4)例えば、映像ペーパー社のときに、次のように書かれている。「始めの2年間は上司や先輩の指示で動いていたが、3年目からは自分で企画を立てて……」といったくだりからは、エントリー者の成長のあとが読み取れる。これでこそ、読み手は判断ができる。

(5)エンドロール社の退職時の理由。これは、書かないほうがよい。内容も後ろ向きであり、読み手にいい印象は与えない。

(6)ABC出版在籍中に「計70冊の本をつくり、そのうちベストセラーといわれる5万部を超える本は12冊にもなった」と書かれている。これが、最大のセールスポイント。この部分をさらに理解してもらうように、別紙「ヒット作品リスト」のような資料をつくり、職務経歴書に添えるとよい。

ヒット作品リストの例

タイトル 発売部数 発売年月 内容 トピックス
実際例で分かる職務経歴書の書き方 1万部 1997年 日本で最初に書かれた職務経歴書の実用的な解説書。実務化ならではの豊富な実例を掲載し一部は添削前・後の解説も収録 発売直後から堅実な販売部数を示し4年間で1万部を記録。著者の処女作としてその後の執筆の扉を開く記念碑的作品となった
※リストは今村さんの著書をサンプルとして記入した。

(7)最後に備考を設けた。ここで、仕事やキャリアについての考え方や意見を書くことで、さらにアピールしている。いちばん始めに書いた「自己ピーアール」や、※のところで書いた内容と矛盾しないようにしたい。

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