内藤VS.亀田戦が教えてくれた“優良コンテンツ”作りのヒント(1/2 ページ)

» 2009年12月04日 08時00分 公開
[小野寺洋,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:小野寺洋(おのでら・ひろし)

1973年佐賀県生まれ、佐賀大学理工学部卒。大学卒業後、出版社に入社。2005年から株式会社JIMOSで自社通販ノウハウを元にしたダイレクトマーケティング支援事業を行う。


 一昔前までは、視聴率30%を超えるテレビ番組も多々あったのに、最近は20%を超えれば喜ぶテレビ局。そんな中、先日行われたプロボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチ内藤大助VS.亀田興毅戦はボクシング番組歴代2位の43.1%の視聴率を記録。報道によると、ボクシング番組の視聴率最高記録は、1978年5月7日の具志堅用高VS.ハイメ・リオス戦の43.2%とのこと。この数字と比較しても、この試合がいかに高い注目を集めていたかが分かります。

出典:TBS

43.1%の高視聴率をたたき出した3つの要因

 では、なぜこんな低視聴率の時代に、これだけの数字をはじき出す番組コンテンツ(=商品)が生まれたのか。突き詰めると、分かりやすい3つの理由に行き着きました。

理由1:試合時間をきっちり1時間に設定したこと

 以前、TBSは実際には試合が20時から始まるにもかかわらず、19時〜21時の2時間でボクシング番組を組み、始まるまでの約1時間を延々と過去のハイライト映像などで引っ張ったことがありました。この時、視聴者から「いったい、いつになったら始まるんだ」「番組を引っ張りすぎ」といったクレームが集中。テレビ放送の倫理に関わる問題となりました。テレビ局はこのことを反省し、きっちり試合が始まるよう、1時間の中継に変更。結果として、よどみのない中継を実現。これが平均視聴率を押し上げる1つの要因になりました。

 →お客さまからのクレームを真摯(しんし)に受け止め、改善したことが支持された!

理由2:分かりやすい対決の構図を作ったこと

 「内藤=冷静なヒーロー」「亀田=熱血の敵役」のように、分かりやすい対決の構図を作ったことも見逃せません。亀田家が敵役になったのは、さかのぼること2年前。内藤大助選手と亀田大毅(興毅選手の弟)選手との対戦で、反則行為を連発して負けた亀田大毅選手とそれをセコンドした父・史郎氏へのパッシングから始まっています。今回のボクシングの試合以前に、「正義のヒーロー(内藤)VS.敵(亀田家)」という、いかにも日本人が好みそうなストーリーを仕立てたことで、お客さんが感情移入しやすかったのです。

 →試合の“意味”を分かりやすくしたことで、単なる「ボクシングの世界戦」が、それ以上の興味・関心と価値をお客さまに与えた!

理由3:ボクシングの醍醐味とも言える打ち合いを続けたこと

 「チャンピオンも挑戦者も様子をみながら静かなスタート」という世界戦が多い中、試合前の舌戦からスタートしていた2人の戦いは、1ラウンドから、目を離したらどちらが勝つか分からない緊迫した展開となりました。これは、試合前からチャンピオン・挑戦者ともに「凡戦であることは見ているお客さまを裏切ることである」と意識し、常にKOのチャンスをうかがって「魅せる」試合を続けたことにほかなりません。

 KOに至る決定打が出なかったため(最終的に亀田選手の判定勝ち)、見ている方からすると結果的にはいささか消化不良の感があったことは否めませんが、試合に対する両者の姿勢には、ボクシング本来の「攻め」と「守り」両方の面白さがありました。

 →お客さまが望むボクシングの面白さ(=目が離せない展開)を2人のボクサーが演出したことで、お客さまはチャンネルを変えにくかった!

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