小で50セント、大で1ユーロ……欧州の公衆トイレ事情松田雅央の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年12月01日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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ユーロ導入でトイレも便乗値上げ

 公衆トイレの料金にも相場があり、今は50セント(大ならば1ユーロ)が一般的だ。昔はもっと安かったのだが、ユーロ導入に伴い大幅に値上がりしてしまった。

 ドイツの場合、ユーロ導入前(2002年1月以前)の料金相場は50ペニヒ(0.5マルク)、つまり50ペニヒ硬貨1枚でこと足りていた。貨幣価値で考えれば「50ペニヒ≒25セント」であるから、ユーロ切り替え後は25セントとなるべきだったが、ユーロには残念ながら25セント硬貨が存在しない。「20セント硬貨+5セント硬貨」あるいは「20セント硬貨+10セント硬貨」の組み合わせも考えられるが、なにしろ払うのが面倒臭い。結局、世の中はコイン1枚で済む50セントに落ち着いている(2倍の値上がり)。これは一種の便乗値上げに他ならない。

ユーロキー

 ありがたいことに欧州でもトイレは「Toilette」(言語により多少異なる)、あるいは「WC」と表示され比較的簡単に見つけることができる。先進国と呼ばれる国と地域ならば障害者用トイレはかなり充実しており、大型店舗、商業ビル、公共施設にはほぼ間違いなく設置されている。

 ただし障害者用トイレは使用を限定するためカギのかかっていることが多く、管理人を見つけて開けてもらう必要がある。そんな不便さを解消し、障害者の自由な活動をサポートしようという目的で導入されたのが「ユーロキー」システムだ。この共通カギを持っていれば、ドイツ、オーストリア、スイスを中心におよそ9000カ所の障害者用トイレ(主にサービスエリア、駅、公共施設など)を利用することができる。

 ユーロキーシステムはドイツ・ダルムシュタットに本部のあるNPO「障害者とその友人協会(CBF)」によって1986年に立ち上げられた。一定以上の障害を持つ人や障害者支援団体などが購入(2500円程度)でき、トイレ利用は当然無料である。

 海外から短期旅行で来た障害者がカギを入手することは難しいが、障害者用トイレの整備された施設のリスト(例えばドイツ国内ならばCBFが作成。観光地であればツーリストインフォメーションに行けば入手可能)を利用すれば、より快適な旅行が楽しめるはずだ。

障害者用トイレ(左)、ユーロキーと、ユーロキーシステムを支援する福祉プロジェクトのパンフ(右)

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