記者クラブを批判したら……最大の抵抗勢力が出てきた(4)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(2/3 ページ)

» 2009年11月27日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

上杉 新聞は記者クラブがあることで、現場の記者から膨大なメモを手にすることができます。政治部の部長や編集委員クラスの人たちにとって、政治部で働くデスクやキャップは自分の後輩。そして後輩たちにメシをおごり、その見返りに情報をもらったりしています。つまり新聞社のエライ記者は現場に足を運ばず、メモを頼りに記事を書いていることが問題。

 これまで記者クラブは開放されていなかったのでメモは貴重だったかもしれませんが、もし開放されればそうしたメモの意味がなくなってしまう。記者クラブが開放されると、現場で取材しない「コメンテーター・ジャーナリスト」は淘汰されるわけです。これは世界的に見ても、当たり前のことなのですが。

窪田 その通りですね。

上杉 こうした政治評論家やコメンテーターこそ、ある意味、最強のスピンドクターなのかも。政治家や若い記者たちの守護神かもしれません。

記者クラブに入りたくない理由

窪田 新聞記者が、“プチスピンドクター”となってしまっている。かつて『フォーカス』の清水潔記者が、桶川ストーカー事件※をスクープしました。この事件が起きたとき警察の記者クラブで発表がありましたが、新聞記者たちは「あの淫乱女は……」といった扱いでした。

※1999年10月、埼玉県のJR桶川駅前で、女子大生の猪野詩織さん(当時21歳)が男に刺されて死亡した。殺害事件後、報道被害を受けた詩織さんだったが、生前「私が死んだら犯人は小松」と遺言があった。殺害事件後も捜査本部が元交際相手を捜査した気配はなかったが、実行犯グループを写真誌『フォーカス』が暴いた。
ジャーナリストの上杉隆氏

土肥 ひどい話ですね。

上杉 僕は記者クラブを批判しているのですが、実は記者クラブがあることで恩恵も受けているんです。例えば首相官邸の記者たちは1〜3階の往来は可能ですが、4〜5階にある総理、官房長官、補佐官などの階には行くことができません。しかし僕は“記者”ではないので、入れるわけです。しかも民主党には秘書時代の元同僚が多いので、毎日のように会ったり電話をして情報交換をすることもできるのです。

 つまり僕のビジネスモデルでいえば、記者クラブはあった方がいいのです(笑)。取材は楽だし、情報を独占できるので。

 よく人から「お前も記者クラブに入りたいんだろう」と聞かれるのですが、アホらしい記者クラブになんか入りたいわけがない(笑)。

窪田 「入りたいだろう?」といった言葉が出てくることが、オカシイ。自分たちが置かれている状況が、いいと思っているのでしょうね。

上杉 僕は記者クラブに入りたいと訴えたことは一度もなく、単に「記者会見に出させろ」と言っているだけ。なぜなら、政治家が記者会見で話したことは「公約」になるから取材上都合がいい。例えば3月24日、僕は小沢一郎さんに「記者クラブを開けますか?」と質問しました。さらに5月16日、鳩山由紀夫さんにも「記者クラブを開けますか?」と聞きました。

 すると2人とも「開けます。どうぞ上杉さんおいでください」と言ってくれた。このように公の記者会見で発言したからこそ、いまこうやって記者クラブ問題について突っ込むことができるのです。もちろん民主党は困っています……なぜなら代表が会見の席で喋ってしまったから「公約」になっているわけですし。

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