Twitterをネタにつらつらとマーケティングを考えてみる(2/2 ページ)

» 2009年11月25日 08時00分 公開
[伊藤達夫,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!
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過去を見ても未来は分からない

 Twitterに話を戻すと、Twitterのタイムラインを見ていると、そういう感覚は薄れていきます。現在が次から次へと生み出されるからです。しかもその発言は予測不能。これまでの発言は次から次へと生み出される発言によって、はるか彼方に押し流される。

 これ、タイムラインセラピーと同じ感覚ですね。作った人が、確信犯的に名付けているのか偶然の一致なのかは分かりませんが、タイムラインセラピーという過去のトラウマ治療に使われるような枠組みと同じです。

 過去に囚われて、抜け出せなくて悩んでいる人を過去から解き放つ手法ですよね。Twitterでは目の前で未来が生まれ続け、過去ははるか彼方へ。すごいです。Twitterをやっていると、悩みが吹っ飛ぶかもしれませんね。

 ごめんなさい。「マーケティングを考えてみる」でしたね。話をもとに戻します。

 マーケティングコンサルタントさんがよく言うのが、「過去を見れば未来が分かります!」ですがそれは嘘です。未来は分かりません。

 タイムラインの流れを予測できるか? 見ていれば分かると思いますができません。天気予報と同じで、昨日と同じ天気の予想をしていれば、当たることが多い、という程度の予想しかできません。「この人はこれまでこういうことを言っているから」とか「今、タイムライン上ではこういう議論がホットだから」とか、そういうところから言う程度の予測しかできず、それは当たらない。

 「じゃあ、どうすればいいんだ!」ということに対しては、試しにいろいろ施策を打ってみる、が正解ですね。紙の上でいろいろこねくりまわしても意味がないのです。もしも、タイムラインの未来を作りたければ、自分も議論に参加したり、呼びかけたりするしかないのです。自分も発言する。そうすると、それに答えてくれる人が出てくるかもしれない。

 それは、これまでのフォロアーとの関係や、その時の発言の質に依存します。その時の発言がすごければ、関係なんて一切なくても反応は起こるかもしれない。しょぼくても、関係が強固であれば、誰かが突っ込んでくれるかもしれない。でも、どう反応してくれるかは予測できませんね。

 そう、これもマーケティングと同じです。顧客とこれまで築いた関係と、これから顧客にオファーする内容の質によるわけです。

 で、関係を築くにはどうするか? これもアクションを起こすしかないのです。そう、常にいろいろと出し続けて、関係を作り続けていくことが大事です。「そんなん当たり前だよ!」と思います? ただ、ここで言っているのは“関係”が大事だと言っているのであって、相手そのものが大事だとは言っていないんですね。

 いいですか。相手そのものが大事なのではなく、関係が大事なのです。「“顧客像”が大事だ!」という人々がすごく多いです。確かに手法としてはそれはあります。手法の中では大事は大事なんですよ。でも、それは関係を明確化するためのものですよね。

 関係はうまく言語化できないことが多いです。顧客像を1つ明確化して、その“ニーズ”に合わせて、というのも大嘘だと私は思います。そもそもニーズなんかないのです。それは1つの像を規定し、さもニーズがあるかのようにしたほうが関係がイメージしやすいからだと思います。

 最近では「ペルソナマーケティング」と、さもまともそうな名前が付いています。これでまた企業からいくらのお金を巻き上げようと言うのでしょうね。もういい加減にしてほしいですけど。

片平秀貴、古川一郎、阿部誠著『超顧客主義』

 東京大学を退官された片平秀貴先生は10年くらい前に「超顧客モデル」とおっしゃっていました。この手法は、潜在ニーズを明らかにする手法ではないと思います。今後構築する関係をイメージしてオファーを作り出す手法ですよね。

 そこを取り違えると、過去のデータを取るのに、お金を使うとか、数万件のデータから最適な顧客像を作り出すとか、そういう発想になってしまうんです。まあ、お金が余っているならそれでいいですけどね。

 「未来の結果から見た時に、潜在ニーズがあったんだ!」というお話は、見るだけでうんざりします。大嘘ですね。まあ、オンラインだろうとオフラインだろうと、ビジネス誌なんてほとんどそれだけでできていますが、そんなもんはこじつけです。

 オファーを受け取る前、買おうと思う前の顧客のニーズなんて絶対分かりませんね。オファーを受け取って、買ったという結果が分かるのであって、その前のメカニズムなんざ分からんのです。

 観測問題と全く同じです。観測した時点で、観測者の意思が介入します。介入した時点で、それまでの被観測物ではないんですね。そのメカニズムはファンクションで記述できるかもしれませんが、おそらく今のところできませんよね。

 で、「問われるのは何か?」というと、オファーの意思です。どんな未来の関係を作り出すかという意思ですね。それだけです。現状は制約条件の一部としてしか認識する意味がありません。ステップ論に落とす時には大事かもしれませんけどね。まあ、現在、常識的に語られるマーケティングを全否定してますけど……、10年後にはこういう考え方がスタンダードになってるんではないかな、と思います。(伊藤達夫)

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