学生生活の悩み、時間、お金――保田隆明が大学院に行く理由(後編)社会人大学院特集(4/5 ページ)

» 2009年11月25日 11時00分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]

“会社派遣”や奨学金制度を活用しよう

 また、保田さんのいるファイナンス研究科では、3分の1くらいの学生が会社の援助を得て大学院に通っている“会社派遣”の人たちだ。例えば地方の銀行に就職したが、大学院に通う2年間だけ東京付になるというケースもある。もちろん、学費は会社持ちだ。しかし、会社派遣の魅力は、お金の面よりも大学院生活を快適に過ごせることが大きいという。

 「18時半の授業に来るというのは、私のような自営業ならともかく、普通のバリバリ働いている会社員にとっては、正直難しいことですよね。会社派遣の場合の一番のメリットは、堂々と授業に行かせてもらえることです」(保田さん)

 逆に、会社には絶対言えないといって、内緒で大学院に通っている人もいる。会社を定時に退社するのも難しい状態では、かなり大変なことだ。「会社派遣になると、その2年間だけ人事部付になるとか、そういう制度のあるところにお勤めなら、絶対利用した方がいいと思います。金銭的な話よりも、時間的なことや会社の理解やサポートという意味において圧倒的に有利です」

 お金の問題については、奨学金制度やローンを利用するという手がある。実際、奨学金制度を利用している人は結構な割合でいる。大学生の頃は、親が何とかしてくれると思い奨学金制度に目が向かなかった人がいるかもしれないが、奨学金は無利子で対応してくれる非常にありがたい制度だ。社会人大学院を対象とする奨学金制度も充実してきている。また、大学院が斡旋している学費ローンも一般の教育ローンより低利だ。調べてみる価値は十分にある。

 また、大学によって異なるが、自分の出身校の大学院に入学する場合は、入学金が無料になったり割引になったりするところもある。チェックしてみて損はない。

「ファイナンス修士(専門職)」と普通の「修士」の違い

 一般の大学院で修士課程を修了すると「○○修士」の学位が取得できるのに対し、社会人大学院を修了すると、「○○修士(専門職)」という学位が与えられる。早稲田大学大学院の場合、一般の修士課程である経済学研究科の修士課程を修了すれば「経済学修士」となるが、社会人大学院のファイナンス研究科で取れる学位は「ファイナンス修士(専門職)」となる。

 一般の修士と区別されることについては色々な理由があるのだろうが、保田さんは「修士論文を書かなくても修了できること」が大きいと思っている。

 「普通の修士は修士論文を必ず書きますが、社会人大学院の場合、修士論文を書くか書かないかは自由なんです。そこだと思います。私は書くつもりですが、それはあくまでも任意の論文。世間でいうオフィシャルな修士論文ではないんです」(保田さん)

 修士論文の扱いは学校によってもまちまちだ。修士論文を義務付けている社会人大学院もある。しかし、社会人向けの大学院を修了したということで、基本的には「(専門職)」が付く。博士課程を考えている場合、少し注意が必要だ。

 「私は博士課程にも行きたいと思っているんですが、博士課程の応募要件には“修士号を持っていること”と記載されていることがあります。最近では“修士号、または専門職修士を持っていること”と、両方を対象とする大学院が増えていますが。注意すべきは修士論文です。博士課程への応募時点で、修士論文の提出を求められることが多いので、論文を書かずに専門職修士を取ると、博士課程の応募で不利になりかねません」(保田さん)

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