学生生活の悩み、時間、お金――保田隆明が大学院に行く理由(後編)社会人大学院特集(3/5 ページ)

» 2009年11月25日 11時00分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]

 とはいえ、そこは授業の選び方次第。それほど大変にはならない人もいるという。

 「自分でどこまで求めるかによります。手を抜こうというと表現はおかしいですが、そこそこでいいという話であれば、それほど大変ではないと思います。それは学校側もよく分かっていて、先生も加減している部分はあるように思います。ですので、うまくやれば、なんとか回していくことはできます。そうでなければ全員修了できなくなってしまう」(保田さん)

 多くの学生が予定通り2年で修了して卒業していく。成績のつけ方も「めちゃくちゃ厳しいとは感じない」。単位だけはなんとか取得できるようにする方向のようで、保田さんのいる研究科の場合は、15回の授業のうち6回欠席すると単位が取れない仕組みだ。逆にいうと、出席点が大きなウェイトを占めているので、きちんと出席していれば単位を取れる可能性が高い。「社会人学生に対する配慮なのか、出席をきちんと取るという制度にしないと学生が学校に来なくなるからなのかは分かりませんが」(保田さん)

 そして、社会人大学院の出席率は非常に高いという。「欠席者はほとんどいないですね。もちろん、出席を取るからということもあると思いますが、大学院に来るという時点で、モチベーションや目的が全然違うんでしょうね」(保田さん)

クラスメイトは30代が中心、プロフィールは多種多様

 社会人大学院生のプロフィールはさまざまだ。保田さんのいるファイナンス研究科に関していえば、一番多いのは銀行、証券、保険など金融関係の人。しかし、メーカーの財務部に所属している人や商社でリスクコントロールをしている人もいる。財務省や金融庁で働いている人がいる一方で、IT企業のプログラマもいる。MBAを持っている人や、他の専攻の修士を持っている人もまれにいるそうだ。また、大学で経済の勉強をしてこなかった人もいる。「入学試験がエッセイなので、経済の勉強をしてこなくても入れる人はいるんです。弁護士もいますよ。ファイナンスの知識が全くない状態から始めたので、ものすごく大変だと嘆いていますが」(保田さん)

 平均年齢は32〜33歳くらいだが、上は50代で、上場会社の役員もいる。会社から派遣されてくる人は20代後半から30代初めが多いという。「ファイナンスという学問の性格によるものもあると思うんですが、まだ実務経験4〜5年の20代後半は、ちょっと少ない。やっぱり30代がメインでしょうか」(保田さん)

 前述の通り、多くの大学院生は2年で修了するが、全員が2年で修了できるわけではない。社会人大学院には長期履修制度もあるので、3年、4年と長期で履修する人もいる。また、入学後に転勤になったり部署が変わって仕事が忙しくなったりして、2年で修了できない人もいる。保田さんの知り合いでも、入学後半年で休学してしまった人がいたという。

 大学院に来る目的はさまざまだが、転職や転部を視野に入れてくる人は確かにいる。ただ、ここに転職したい、こういう仕事をしたい、という目的意識がはっきりしていれば、大学院に来る前にすぐ転職するはずだ。「“自分の適性を見てみよう”とか“どういう仕事があるのか見てみよう”とか、転職の準備段階として大学院に来る人もいるようですね」(保田さん)

 そして早稲田の場合は、学歴のために来ている人もいる。「目的として、そういうのがあるというのは聞きます。『僕は学歴ロンダリングだから』と公言する人もいますからね」(保田さん)

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