なぜギャップが生まれる? 環境都市とその実態松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年11月24日 11時36分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

 しかし、社会を動かし市民の共感を得るには単なる反対だけでは不十分。原発を建設しないのならば、不足する電力をどのように補うのか新たなビジョンを示す必要があり、その回答がソーラーを中心とする再生可能エネルギーであった。2009年現在、フライブルクのソーラー発電能力は12メガワットを超え、これはギリシャ一国のソーラー発電能力に匹敵する。ソーラーの他にもバイオマス発電(7.3メガワット)、水力(1.4メガワット)、風力(12.9メガワット)など、再生可能エネルギーの開発と利用が進められている。

反原発運動が始まった地域のブドウ(左)、サッカースタジアムの屋根に敷かれた太陽電池(右)

CO2排出削減

 フライブルクは現在、さらなるCO2削減を目指している。他の都市に比べ早い時期から再生可能エネルギー開発と環境保全に取り組んできただけに、削減の余地は小さくコストもかかるが、市議会は2030年までに1992年比マイナス40%の厳しい目標を定めている。「絵に描いた餅」に終わらないよう、毎年達成度がチェックされる。

 あえて厳しい目標を定めた理由はいくつかあるだろう。環境首都としてEUやドイツが掲げる目標(30%程度)よりも高くする“意地”もそうだが、この目標を踏み台として環境産業を発展させる目論見もあるはずだ。ドイツがなぜ環境大国として成功できたかといえば、厳しい規制を課しそれを克服する技術力を磨くことで世界の環境産業をリードしてきたのが理由だ。CO2削減には産業界から反対の声が上がるが、厳しい規制は新たなビジネスチャンスを開くカギでもある。

トラムはグリーン電力100%

 具体的な手法としては、再生可能エネルギー開発に加え、省エネルギーの促進、新たな技術開発などが挙げられる。省エネルギー分野でポテンシャルが大きいのは古い住宅の断熱改修(関連記事)交通政策においては自転車や公共交通の利用促進(関連記事)。ちなみにドイツは電力小売の自由化が進んでおり、再生可能エネルギー由来の電力だけを選んで使う「グリーン電力契約」が可能だ。フライブルク市の交通局は運行するトラム(路面電車)をグリーン電力だけで動かしている。

フライブルク中心市街地の自転車道(左)トラムの電源は100%グリーン電力(右)

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