このように、国によって大きな違いがあるヨーデル。北川さんは、これらスイス、オーストリア、ドイツのヨーデルのすべてを歌えるプロフェッショナルなヨーデル歌手なのである。
「私はどんなタイプのヨーデルであれ、それを歌うことを通じて、人に夢を見てもらい、人々を暖かい気持ちにしたり、慰めたり、元気づけたりすることが、自分のミッションだと思っています。人間の社会とそうやってつながって生きていこうと思っているんです」
女性ヨーデル歌手の日本における第一人者として、北川さんが最も留意しているのは、「ホンモノを伝える」ことだという。
「よく訓練された演奏技術をベースに、ひとつひとつの楽曲を正確に再現することはもちろん大切です。しかしそれ以上に重要なのは、その国やその地方に特有の文化や歴史や人情を、自分自身の心と体で感じとること。そしてそれを、その土地特有の“訛り”で伝えるということです。ここでいう訛りとは、言語上の方言だけでなく、音楽表現上のクセも指しています」
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