「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で、あるいは個人で奮闘して目標に向かって邁進する人がいる。
本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現する人物をクローズアップしてインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。
ヨーデルと聞いて、あなたは何を思い出すだろう――それは「アルプスの少女ハイジ」に出てくるような、スイスアルプスにこだまする独特の裏声を駆使した歌声だろうか。それともミュンヘンのビアホールに響く、陽気でアップテンポな歌声だろうか。
いずれにしてもヨーデルとは、スイスやオーストリア、ドイツの山岳地方の民俗音楽であり、日本人とは縁遠いものというのが、一般的な認識だろう。
ところがそのヨーデルの世界において、本場スイスで認められ、ヨーデル歌手の最高ランクにあたる「1級」を取得した日本女性がいるという。今年の春、スイスでヨーデルのCDを発売した彼女は、本来クラシック音楽の声楽家で、数々のオペラ・オペレッタの舞台にも立ってきたとのこと。
そこで筆者は、早速その女性、北川桜さんのライブに足を運んでみた。すると……。
ステージ上の彼女は、まさにエンターテイナーそのものだ。クラシック出身と聞いて想像するような、堅苦しいイメージとはまるで逆。華やかな民族衣装に身を包み、満面の笑みを浮かべ、自らアコーディオンを弾き、時にカウベルを鳴らしながら、ステージ狭しと活発に動き回る。お客さんのひとりひとりに視線を投げかけ、アイコンタクトを取りながら、客席に向かって呼びかける。始めはモジモジしていたお客たちも、少しずつ曲にあわせて体を動かし、ビールを飲み干し、踊り始める。やがて彼女と会場は一体となって盛り上がり、熱気が渦巻いてゆく……。
北川さんのヨーデルは、技巧的でありながらも、母性を感じさせる暖かい感情が声の隅々にみなぎっており、それが聴く者の心の襞(ひだ)に分け入ってきて、忘れ難い印象を残す。
1人の舞台人、エンターテイナーとして興味をそそられた筆者は、北川さんにお話をうかがうことにした。すると彼女の語る言葉は、民俗音楽の演奏家という枠を越え、今、日本でビジネスに成功している人たちと共通するファクターを多々含む、示唆に富んだ内容だったのだ。
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