本場スイスで初めてヨーデルCDを発売した日本人歌手――北川桜さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/7 ページ)

» 2009年11月21日 06時30分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で、あるいは個人で奮闘して目標に向かって邁進する人がいる。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現する人物をクローズアップしてインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 ヨーデルと聞いて、あなたは何を思い出すだろう――それは「アルプスの少女ハイジ」に出てくるような、スイスアルプスにこだまする独特の裏声を駆使した歌声だろうか。それともミュンヘンのビアホールに響く、陽気でアップテンポな歌声だろうか。

 いずれにしてもヨーデルとは、スイスやオーストリア、ドイツの山岳地方の民俗音楽であり、日本人とは縁遠いものというのが、一般的な認識だろう。

 ところがそのヨーデルの世界において、本場スイスで認められ、ヨーデル歌手の最高ランクにあたる「1級」を取得した日本女性がいるという。今年の春、スイスでヨーデルのCDを発売した彼女は、本来クラシック音楽の声楽家で、数々のオペラ・オペレッタの舞台にも立ってきたとのこと。

 そこで筆者は、早速その女性、北川桜さんのライブに足を運んでみた。すると……。

渋谷にあるレストラン・バー アミューズメントで行われた「北川桜オクトーバーフェスト東京」の様子。ドイツヨーデルを歌う北川さん

ビールの祭典を盛り上げるエンターテイナー

 ステージ上の彼女は、まさにエンターテイナーそのものだ。クラシック出身と聞いて想像するような、堅苦しいイメージとはまるで逆。華やかな民族衣装に身を包み、満面の笑みを浮かべ、自らアコーディオンを弾き、時にカウベルを鳴らしながら、ステージ狭しと活発に動き回る。お客さんのひとりひとりに視線を投げかけ、アイコンタクトを取りながら、客席に向かって呼びかける。始めはモジモジしていたお客たちも、少しずつ曲にあわせて体を動かし、ビールを飲み干し、踊り始める。やがて彼女と会場は一体となって盛り上がり、熱気が渦巻いてゆく……。

カウベルを振り、ドイツ式の乾杯を客に促し、楽器を奏で歌い……とエネルギッシュにステージとお客を盛り上げてゆく

 北川さんのヨーデルは、技巧的でありながらも、母性を感じさせる暖かい感情が声の隅々にみなぎっており、それが聴く者の心の襞(ひだ)に分け入ってきて、忘れ難い印象を残す。

 1人の舞台人、エンターテイナーとして興味をそそられた筆者は、北川さんにお話をうかがうことにした。すると彼女の語る言葉は、民俗音楽の演奏家という枠を越え、今、日本でビジネスに成功している人たちと共通するファクターを多々含む、示唆に富んだ内容だったのだ。

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