年収500万円で終わらないためには、どうすればいいのか吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年11月20日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 それを踏まえたうえで、会社員、特にホワイトカラーについて述べた。

 「経済が成長し、市場が飽和すると、ホワイトカラーのあり方も変わっていかざるを得なくなるのです。例えば、営業部があり、そこでは部員がスキルによって、初級・中級・上級と3つのレベルに分けられるとします。

 成長期には市場にはニーズがたくさんありますから、初級レベルの営業力でも売ることは難しくありません。そして、より多く売るコツを身につけていくことでみんなが上級者になり、やがては管理職になっていきます。

 ところが、これがいまのような成熟期になると、簡単に売れるようなモノはネット通販などに限られてきます。あるいは、自らのスキルを売るのではあるならば、コールセンターでの対応くらいになります。中級程度のモノは、代理店の仕事などになります。それぞれのニーズに合わせてソリューションを提供する難易度の高い仕事は、プロフェッショナルの仕事と位置づけられます。

 つまり、初級、中級、上級という構造が、以前のようにキャリアパスとしてつながっていないのです。上級な仕事以外は、仕組み化されたりアウトソースされたりしているわけです」

 そして今後、ホワイトカラーは2極化していくと説く。

 「この動きは早いスピードで、まさに加速度的に進んでいます。今後は、より高いパフォーマンス(実績など)を出すことができる人と、そうでない人とにハッキリと分けられていくでしょう。

 前者になる人は、激しい競争により一段とその数は絞られるはずです。後者になる人は、主に単純労働をしていくようになります。これがアウトソーシングされたり、契約社員やパート、派遣社員などに託されることになるのです」

 さらに厳しい現実を指摘する。

 「後者の人たちを集めるのには、主に2つの方法があります。1つは、アウトソーシングすることです。アウトソース先には正社員もいますが、契約社員、派遣社員などを活用するケースが多く見られます。

 もう1つが、 非正規社員の活用です。そこで働く非正社員を正社員化の登用試験などでを経て正社員にしていく方法があります。ただし、これは年収にすると300万円前後で、そこから昇給もさほどしない、いわば、ニュータイプの正社員です 。

 このタイプの正社員を増やすことはスムーズには進んでいません。労働組合などが、旧来型の正社員の既得権が侵されることを警戒しているのです。労働組合の中には、非正規社員を組合員化していく動きが一部では見られます。しかし、“従業員の味方である”と言いながら、基本的には正社員雇用を守りたいという前時代的な意識から脱け出すことができていません」

 このような背景があり、会社は1つめの方法をとらざるを得ないのだという。ここに、非正社員の比率を上げていく真相がある。このあたりを踏まえることなく、企業に「非正社員を増やすな! 正社員の比率を上げろ!」と叫んでも、それは空しい。

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