特に売り急ぐ材料もなかったのですが、相変わらず買い気の乏しい中で持高調整の売りなどに押され、大幅下落となりました。公募増資などの需給悪化を懸念する向きも多く、また、政策のブレが取りざたされて、全く、方向性が見えないことなどから売り急ぐ動きとなっているものと思います。昨年のような下落を危惧する向きもいるのかもしれませんが、実際に業績が回復している企業も多く、政策に絡まないところで、業績を伸ばしているような企業は底堅さも見られるものと思います。
銀行を中心に公募増資が悪者扱いされていますが、ここまで下落したのは公募ばかりが悪いということではないと思います。もちろん増資ラッシュで売られたものもありますが、大きな要因はやはり政策だと思います。ここのところ何度もこのコラムで述べていますが、「日本丸」の進む先が全く見えず、船頭ばかり多く、パフォーマンスばかりなので、そうした政策に嫌気した売りも多分にあると思われます。
マニュフェストも何もあったものではなく、良いも悪いも全て今までのものを否定し、今後の予算もすべて否定し、マニュフェストすら否定して、何も出来ないということが一番の問題でしょう。企業業績は底入れ感もあり、本来であれば業績回復を囃して、米国市場などの海外市場のように株が買われる=投資資金が流入してもおかしくはないのですが、投入した資金が無駄になるかもしれないと思えば、日本から資金を引き上げる動きに出てもおかしくはありません。
「デフレ」を懸念するのであれば取りあえずは「恐竜時代」に戻って、財政を出動させるべきであり、しっかりと足元を固めながら先に進まなければならないでしょう。まだICU(集中治療室)に入っている患者に10メートルでもダッシュさせることが出来ないのですから、とりあえず治療を続け、一般病棟に移り、リハビリをしてそれから退院、そして通院しながらリハビリを進めて、完治してからダッシュするべきなのではないでしょうか。ただ、これだけわけも分からず売られると、7月の下落のときのように、持高調整の売りが終われば「あれは何だった?」というように、わけもわからず戻るものも多いのではないかと思います。
慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券などを経て現在リテラ・クレア証券で相場情報などに携わっている。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤」
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