もはや100円でも売れない……自販機不況に活路はあるか?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2009年11月19日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン


 外食を減らしてお弁当を持参。割高なコンビニエンスストア通いも削った。次の節約術は何だろうか?

 それは自動販売機(自販機)。不況の烈風が吹き荒れるボーナス3割カットの厳冬だから、150円もするペットボトルをホイホイ買える人は恵まれている。ディスカウント自販機を探してまとめ買い、マイボトルを持参する人も増えた。

100円自販機

自販機販売は減少の一途

 日本自動販売機工業会がまとめた全国の販売統計によると、設置台数は2000年の560万台をピークに、2008年12月末には526万台へと6%減。売上減少はもっと深刻で、2000年の7兆円は2008年には5兆7000億円へと約20%減。タスポ導入でタバコが店頭売りに流れた事情はあったにせよ、振るわない主因は清涼飲料とコーヒー、ビールである。どれも“自販機価格”が崩壊しているのだ。

自動販売機の普及台数と自販金額(出典:日本自動販売機工業会)

 自販機の売上依存度が90%と高いダイドードリンコの今年の販売状況を見てみよう。10月までのデータ(本数ベース)ではコーヒー飲料は6%減、お茶は10%減、果汁飲料は16%減、機能性飲料も14%減と、炭酸を除いてすべてマイナス。売上ベースではもっと落ちているだろう。同社は自販機ビジネスモデルを再構築するため、製販を再統合させる大組織改編を進める一方、成長市場として中国市場も目指すという戦略を打つ。

ダイドードリンコ販売状況(出典:ダイドードリンコ)

 一方、お茶が看板商品の伊藤園でも、2009年4月期の業態別売上高は、スーパーが前年比4.0%増、コンビニは同1.5%増なのに、自販機は同4.2%減と足を引っ張る。同社は総売上高に占める自販機販売比率が17.7%と低いのが幸いしている。さらにトップシェアのコカコーラでも、コカ・コーラウエストの開示資料によれば、2009年第3四半期の自販機販売は前年比8.3%減。ヤバいのである。

 スーパー、コンビニに続く“業界再編”が自販機業界に及ばざるをえない。

減少原因のひとつは大口購買の縮小

 なぜ売り上げも利益も落ちるのか。都心部では30人に1台と言われる飽和市場。自販機の新規設置の余地はすでに限られている。そこに非メーカー系のベンダーも切り込んできて、設置場所の奪い合いが激化。リプレース需要を食い合っている。設置オーナーへの条件も甘くなるので利益も悪化する。

 建築基準法改正に伴う建築着工の遅れで、建築現場での飲料購買も激減した。さらに金融恐慌により建築も土木もストップ、続いて起きた製造業の不振で派遣社員も正社員もリストラが相次ぎ、工場など事業所内の飲料需要が激減した。

 要するに“定価購買の大口顧客”を一気に失ったのが直接要因である。

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