コラム
» 2009年11月19日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:なぜか不気味なほど似ている……JALを笑えないメディア界 (1/2)

負の遺産のツケが回り、巨額赤字に陥った日本航空(JAL)。メディアはこぞってJALを批判しているが、そのメディアの経営基盤は磐石なのだろうか。JALとメディア……この2つを比べると、不思議なほど似ている点があった。それは……?

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、『完黙 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥津軽編』(小学館文庫)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。


 日本航空(JAL)が先週、2009年9月中間決算を発表した。本業のもうけを示す営業損益は957億円の赤字となり、過去最悪。存続さえも取りざたされる事態となっている。が、危機は今に始まったことではなく、負の遺産のツケ回しが最終局面にきていることは多くの読者がご存じのはず。

 では、一連の危機を報じる側のメディア界はどうなのか。JALのぬるま湯体質を批判する資格はないと筆者はみる。JALとマスコミ界には不気味な一致点が数多く存在するのだ。

不気味に重なる“不振”の原因

 今回のJAL中間決算が過去最悪の中身となった原因について、主要新聞、テレビの報道をチェックすると以下のような原因が挙げられている。

 「世界不況による需要の急減」「旅客数の減少や航空料金の低下」――。

 これをマスコミ界に当てはめてみよう。

 「世界不況」というくくりでは、メディア界は昨秋以降、収益の柱である広告が急減した。「旅客数の減少、料金の低下」という観点からは、インターネットユーザー急増による購買部数の急減、あるいはテレビ視聴者の減少……といった点が浮かび上がってくる。

 民放キー局の9月中間決算の中身をみてみよう。不況のあおりでテレビ局の収益の柱となっている広告収入が激減、全社が大幅減収に見舞われた。フジテレビ、TBS、テレビ朝日は本業の不振が際立った。辛うじて黒字を確保した日本テレビとテレビ東京にしても、制作費など諸経費の切り詰めでしのいだ感が強い。

 地デジ対応で巨額の設備負担を強いられたうえに、広告減に見舞われた地方局は言うに及ばず、大手と呼ばれる新聞各社も多くが足元の決算で赤字に陥った。

 深刻な事態に陥っているJALの経営体質については「お役所的」、「高額給与・年金問題」という観点からも日々厳しい批判が浴びせられている。これをマスコミ界に置き換えると、先の不振の原因と同じように、多くの共通点が垣間見えてくる。「お役所的」な体質はマスコミ界にも横たわっている。「局」や「部」単位での縄張り意識が極めて強く、リベラルな論調で知られる企業でさえ、出身母体となった部や局での経歴が幹部人事の行方を左右するところが少なくない。

 「高額給与」についても同様だ。筆者が業界内の組合情報で得たデータによれば、主要キー局、あるいは大手在京紙・地方紙では、入社10年程度で年収1000万円を越す社員が数多く誕生する。昨今の不況でボーナスや残業代が削減されていることを勘案しても、民間企業の平均給与429万6000円(国税庁・昨年の民間給与実態統計調査)よりも遥かに高い水準にあるのは間違いない。

 本業の不振、硬直的な経営体質、高額賃金……要するに、めまぐるしく変わる世情、そして顧客のニーズについていけなかったのがJAL、そしてマスコミ界なのだ。

JALはなくならないが

 「我々、記者は選ばれた人間。あんたの批判は的外れ。質問に答えろ」――。

 十数年前、現在のJALと同様に、某大手銀行の経営問題が浮上した際のこと。満員の会見場で当該銀行の頭取と、某大手紙のベテラン記者が言い争う場面があった。

 原因はこの記者が「頭取の給与をつまびらかにせよ」と迫ったことにある。当時は銀行に対する公的資金注入が世間を騒がせていた時期だったが、経営責任を厳しく問われていた大銀行はトップのサラリーを非公開にしていた。記者の質問は至極真っ当なものだった。が、これに対し老練なバンカーは、マスコミ界も高給与ではないかとやり返し、年収はいくらだと迫ったのだ。質問の口火を切った記者は臆することなく、先の言葉を吐き、会見場の空気が一気に凍り付いたのだ。

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