コラム
» 2009年11月18日 08時00分 UPDATE

コカ・コーラのブランドマーケティング

名前の認知率が極めて高く、どんな色や味をしているのか誰でも知っているコカ・コーラ。しかし、毎年莫大なコストをかけて大々的な宣伝をしているのはなぜなのだろうか。魚谷雅彦著『こころを動かすマーケティング コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』からその理由を読み取る。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


ah_nihokoka.jpg 出典:日本コカ・コーラ

 「コカ・コーラ」という商品名を知らないという日本人は、赤ん坊を除いてはまずいないですよね。世界規模で見ても、コカ・コーラの「認知率」は実質100%でしょう。それにも関わらず、毎年莫大なコストをかけて広告を展開しています。なぜなのでしょうか?

 もちろん、この理由を端的に言えば、商品はただ知られている(認知)だけで売れるわけではないから……ですね。商品の特徴を理解してもらい、好ましいイメージを形成し、好意を高め、購買意欲を刺激し続ける努力を続けないと、すぐに飽きられ、競合商品にシェアを奪われてしまうからです。

 ただし、コカ・コーラについては、名前だけでなく、どんな色や味をしているのか、などについて誰でもよく知ってます。つまり、商品の特徴も十分に理解されているロングセラー。ですから単に「こんな製品ですから、もっと買って!」という「理解」や「説得」を目的とする「プロモーション広告」(「広告リレーション理論」に基づけば)は、もはやあまり機能しません。

 むしろ、時代のトレンドやその時々の消費者の気分を的確に読み取り、「共感」を得られる広告、すなわち「コミュニケーション広告」を展開することが有効です。実際、コカ・コーラでは、上記のような「コミュニケーション広告」を主体としたマーケティング活動が行われてきています。

 そして、コカ・コーラのマーケティングの基軸となる考え方が、『こころを動かすマーケティング コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)で解説されています。魚谷氏はブランドの価値を次の2つに分けます。

(1)intrinsic value

基本的な価値。機能やスペックの価値のこと。

(2)extrinsic value

(1)に付帯的に加わる価値。エモーション、情緒や感性の価値。

 そして、魚谷氏は、マーケティングにはこの両方が必要だと考えています。理屈だけではなかなか共感は生まれない。「心に届くコミュニケーションをしなければ!」という意識が極めて強いのが、コカ・コーラなのだそうです。

 コカ・コーラは、「intrinsic value」(基本的価値)については100年以上変えていません。しかし、「extrinsic value」(付帯的情緒的価値)は時代に合わせて大きく変えてきたのです。

 魚谷氏は「コカ・コーラは、その時代時代に応じてメッセージを変え、常に共感を獲得してきました」「自分自身の気持ちと呼応し、自分自身に訴えかけてくれる、自分をサポートしてくれていると思えるような関連性を、数年おきに、時代のあり方に合わせて変えてきたのです」と書いています。

 ロングセラーを生み出す秘訣、それは、商品自体を変えることではなく、ターゲットに届ける「メッセージ」を時代に合わせて変えていくことなんですね。(松尾順)

 →松尾順氏のバックナンバー

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