1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。
著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)など。ブログ「吉田典史の編集部」
「なぜ、リストラがこんなにスムーズに進んでいるのでしょう?」
先日、出版社の週刊誌編集部から取材を受けたものの、私はすぐに言葉が出てこなかった。確かに、ここ数カ月の間にも大きなリストラがいくつも行われている。
報道によると、経営再建中のパイオニアでは、1300人の早期退職の募集に1204人が応募し、9月末で退職した。三洋電機は、希望退職者の募集に800人を超える社員が応募したという。また消費者金融大手アイフルは、グループで約2000人の希望退職を募集し、正社員を2010年2月末までに半減させると発表している。
これらは、多くの企業で行われているリストラのごく一部である。一部の外食産業や金融機関、小売店の中には、30代の社員を対象にリストラを行っている企業すらある。それでも、大きな話題になっていない。
ここで問題視されるべきは、ほとんどの人が「NO!」と拒絶の意思を示さないことである。むしろ、「仕方がないか……」とあきらめているようにすら思える。その姿勢が、経営者たちに隙(すき)を与えているのではないだろうか。
リストラを受けた会社員が納得して会社を離れているのかといえば、実はそうではない。報道によると、解雇などで収入が減り、住宅ローンの返済が難しくなり、その相談に金融機関に現れる人が増えているという。三菱東京UFJ銀行は、その数が毎月500件ほどになる。三井住友銀行、みずほ銀行なども相談を受ける行員を増やしたり、電話相談の窓口を設けたりしている(2009年10月25日、日本経済新聞朝刊)。
多くの人は、リストラに納得していないことがうかがえる。当然のごとく、生活に困っている。それでも、会社に自らの意思を強くは示さない。おとなしく、耐えることで乗り越えようとしている。
その考え方や生き方を私は否定しない。もしかすると、会社が願うように、辞表を素直に出すことの方がよいのかもしれない。だが、その選択が得策であるのかどうかを今後の人生を考えた上で冷静に検証することを勧めたい。いま、20〜30代の人も無関係ではいられない。数年後は、我が身であるかもしれないのだ。
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