キムタクの「タマホ―――ム♪」は、戦略的にどうなのか(1/2 ページ)

» 2009年11月12日 08時37分 公開
[中村修治INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 みのもんたさんから木村拓哉さんへ。タマホームのCMキャラクター起用は、いつも衝撃的である。その話題だけで、十分にCM効果はある。認めざるをえない。しかし「ビバリーヒルズにタマホームを建ってたら」と言われても……。その広告効果の「質」については、少しばかり疑問である。

 3カ月程前のことである。「マイケル謎の死の2日前に撮影された、木村拓哉 幻のCM」というニュースがサイゾーウーマンから提供された。

 ディープパープルの『Burn』を使用した“タマホ―――ム♪”というサウンドロゴが印象的な、あのCMには、幻のテイクがあったと木村拓哉さん自身がラジオで打ち明けたというもの。

 「この先も日の目を見ることのないかもしれない“幻のCM”。それは、あのマイケルジャクソンをモチーフにしたものだったんです――」

 「CMプランナーのヤマザキさんと監督とディスカッションする中で、『ビバリーヒルズにタマホームが建ってたら』っていうのもあったんですけど。『それって、それこそ、マイケルがタマホームに住んでたらってことですよね?』って言ったら『実はそれ、本当にやりたいことなんですよ』って言われて」

 「小道具としてサングラスがあったんで、洗面台の上でかけてね。もしマイケルがタマホームに住んでたら……ハッ!! みたいなノリで、マイケルらしく動いて『ホウ!!』って、やったんですよ。現場の、ホントそのときのノリでね」(マイケル謎の死の2日前に撮影された、木村拓哉 幻のCM」サイゾーウーマンより

 そうなのだ。タマホームのあのCMは、ノリでできているのだ。オシャレだし、センスで勝負しているのも分かる。しかし、数千万円を出して購入する一戸建ての家を売る会社のCMがノリで作られて良いのか……を考えてみる。

 みのもんたさんから、木村拓哉さんへ。CMキャラクターを変えたということは、戦略を変えようという意図があったからだろう。安くて庶民的な一戸建て住宅ブランドから、若年ファミリーにも受け入れられるセンスある一戸建て住宅ブランドへ。

 今まで開拓できていなかった層への広告アプローチとしては、戦略的で面白い。攻撃的かつ刺激的。広告作品としては、素敵である。しかしよく見てみると、その展開は戦術的にあまりにも大ざっぱである。

 「ビバリーヒルズにタマホームを建てたら」と大々的に告知しながら、その答えはどこにも一切ない。せめて、チラシやWeb上で、何らかの種明かしがあれば嬉しいところなのだが。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.