週刊誌の編集部で、こんな取材をしてきたどうなる? 紙メディア(1/2 ページ)

» 2009年11月06日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 数々のスクープやスキャンダル記事で、社会の裏側を暴いてきた週刊誌。新聞やテレビなどとは違った切り口がウリなのだが、実際にはどのような取材をしているのだろうか。元『週刊現代』編集長の元木昌彦氏が、現役時代の裏話などを語った。

※本記事は日本ジャーナリスト会議主催の集会(10月16日)にて、元木氏が語ったことをまとめたものです。

 →なぜ総合週刊誌は凋落したのか? 出版社を取り巻く3つの課題(前編)

 →なぜ同じような雑誌が出てくるのか? 柳の下にドジョウが3匹の不思議(中編)

死体を掘り起こし、スクープを

元木:私は講談社に1970年に入社して以来、ずっと雑誌畑を歩んできた。講談社で雑誌ばかりを担当してきたのは、私だけではないだろうか。そして事件を追うことになったが、先輩たちは何も教えてくれない。事件があれば「○○に行ってこい!」と、ただそれだけ。もちろん相手の居場所や連絡なども教えてくれなかった。

 『週刊現代』に配属されて1年目のときだった。立教大学の助教授が、自分の教え子を殺害するという事件があった。実はその生徒は、教授の愛人。何らかのトラブルでその生徒を殺し、そして教授は一家心中した。

 もちろん新聞やワイドショーなどは大騒ぎ。私も上司から「取材に行ってこい」と言われ、記者と一緒に現場に向かった。出版社は記者会見に入れないので、現場に行ってもすることがない。もちろん聞き込みをしたところで、みんながその事件について知っているわけではない。記者と2人で「どうするか」と考えた。そして殺害現場の近くを掘り起こし、被疑者の遺体を見つけようとしたのだ。

『週刊現代』(11月14日号)

 「もし自分たちが土を掘り起こし、遺体を発見すれば大スクープになる!」――。そんなことを考え、行動に移した(笑)。私たち2人は金物屋でシャベルを購入し、暗くなるのを待った。助教授は殺害現場となった別荘から、クルマを使わずに遺体を運んだ……ということだったので「少し離れた場所に埋めているはずだ」と推理。そして、夜になって土を掘り始めたのだ。

 しかし背後からサーチライトを照らされ、「お前たち、ナニやってるんだ!」と叫ばれた。振り返ってみると、警察官2人がいた。その警察官は「ナニやってるんだ」と聞いてくるものの、正直に「遺体を掘り起こしています」とは答えられない。なので「私たちは週刊誌の記者をしていまして、みなさんのお役に立とうと思い……」などと言った(笑)。すると警察官に「余計なことするんじゃねえ!」と、怒られてしまった。仕方がないので、シャベルを放り投げて、その現場を後にしたのだった。

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