欧州パッケージツアーの仕掛け人――クオニイ・ジャパン 松日樂優紀さん(後編)あなたの隣のプロフェッショナル(4/5 ページ)

» 2009年11月06日 08時00分 公開
[嶋田淑之Business Media 誠]

これまでを振り返っての今後への展望

 上智大学卒業と同時にクオニイ・ジャパンの正社員となった松日樂さん。その後の活躍ぶりについては前編で詳述した通りである。

 これまでにツアー案件として扱ってきた国はスイス、ドイツ、フランス、オーストリア、ハンガリー、チェコ、オランダ、ベルギー、英国……。現在、業務のために勉強中なのがクロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、マルタ……。そして彼女自身がこれまで実際に訪問した国は英国、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、スペイン、イタリア、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スイス、トルコ、さらには米国、カナダ、メキシコ、南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエ、韓国、マレーシア、台湾、タイ、マカオ、オーストラリア……。

フランスのモンサンミッシェルにて

 今、改めて振り返ってみて、松日樂さんは自身のこれまでのキャリア構築のあり方について、どんな感想を持っているのだろうか?

 「帰国直後の自分にとっては、クオニイ・ジャパンでの仕事こそが最高の適職だったと思います。でも、そろそろ次のステージを考えたいと思っているんです。今くらいのタイミングで何らかのステップアップをすることが当初からの希望でもありましたから」と意外とも思える言葉を口にした。

 「もし、社内で異動するのであれば、海外のオフィスに行きたいと思っています。また、転職ということを考えるのなら、通訳、学芸員、語学講師、国際機関職員などを考えていますが、ぴったり来るものはまだ自分にも見えていません。

 また、私自身のこれまでの経歴には、大学の友人たちのように『リクルートスーツを着て就職活動をする』という経験が欠けていますよね。自己分析も業界研究もきちんとやったことがありませんが、今になってその重要性を痛感するときがあります。だから、そういうことも、大学生の時のようにはいきませんが、何らかの形でやっておきたいなと。

 さらに言えば、これは国際機関に就職する場合の必須の要件になるんですが、大学院で国際関係論を学ぶことも、ずっと興味がありながら踏み込めなかった分野なので、できればチャレンジしたいと思います」

松日樂さんの思いの真意は?

 彼女の発言には2つの真意があるように筆者には感じられた。

 第1は、ツーリズムのバックヤードではなく、あくまでも海外の現場で仕事をしたいという強い想い。後編をご覧になられた方にはお分かりいただけると思うが、松日樂さんはさまざまな国に行って、そこで良い出会いに恵まれている。そして、勉強であれ仕事であれ人生の大きな方向性であれ、その出会いを通じて、さらにアップグレードしたステージに到達できていることは明らかである。

 それは、彼女の人間的な魅力や才能のなせるワザなのであろうが、行く先々で彼女の違った側面に光が当たり、そこから彼女の新しい可能性が次々に引き出されていることが実感されるのである。

 自分の未知の可能性、それもあらゆる可能性を引き出していきたい。そのためには、できる限り、あらゆる国に実際に足を運ぶことが必要……、そういう自分自身の特性を明確に自覚し得ているからこそ、「世界のすべての国・地域に行きたい」と彼女は言うのだろうと筆者は思う。

 第2は、彼女が「バランスの取れた人間的成長」を念願しているということ。今さら自己分析の必要もないほど、自分という人間の特性を把握し得ている彼女であるが、上記のように普通の大学生のような「自己分析・業界研究」をして「就活」をしたいという。そして、一度は断念した国際関係論を学ぶために大学院にも入りたいという。その真意は「蛸壺型の偏った人間にはなりたくない」という思いにあると筆者は感じた。

 1人の日本人女性として、ほかの女性の多くが経験するような苦労もちゃんと味わい、そういう人たちと同じ目線を失うことなく生きていきたいという思い。そして、苦手だからといっていつまでも逃げ回るのではなく、機会を見つけてそれを克服していきたいという思い。そういうものを、彼女の中に感じないではいられないのである。

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