子どもたちはスーパーカーに乗る夢を見るか!?それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2009年11月03日 00時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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メッセンジャーとしてのスーパーカー

レクサスLFA

 再び日経トレンディネットの記事「レクサスLFA開発者に聞く、3750万円のスーパーカー誕生のワケ」を見てみよう。

 3750万円といえば、フェラーリのトップクラスとも比肩する価格であり、超富裕層ターゲット向けのクルマである。しかし、限定500台、採算度外視で作られたこのクルマの狙いはそこだけではない。

 LFAの使命は、クルマがもたらす官能・感動の領域を極限まで追求して、レクサスのブランドイメージのさらなる浸透を図ることという、トヨタの旗艦ブランドへの貢献もさることながら、そして未来を担う子供たちに、クルマの素晴らしさを伝えるメッセンジャーとなってほしいという意図も込めているのだ。

 若き日に前出の「ハチロク」に乗ったり、憧れたりしたオジサンたちは、もっと小さかった頃にはキラ星のごとき「スーパーカー」にドキドキしていた。そのドキドキを今の子供たちにも伝えようというメーカーとしての夢と意志が込められている。

 トヨタは、ハイブリッドや電気自動車、エコカーの開発と同時に、こうしたガソリンエンジンのスポーツカーも開発するという、全方位型の展開をする。それは自動車業界のリーダー企業ならではの戦い方だ。

 体力に劣るチャレンジャー企業であるホンダは、フラッグシップスポーツ「NSX」後継車の開発を既に中止している。しかし、「次世代にクルマの魅力を伝えたい」という熱い想いは同じだ。集中戦略に徹し、ハイブリッドの上で結晶化させた。

ホンダ「CR-Z CONCEPT 2009」

 日経トレンディのレポート「ホンダ『CR-Z CONCEPT 2009』、ほぼそのままの形で来年2月市販化」を見てみよう。

 ホンダは「ハイブリッドスポーツ」というコンセプトを世に問うている。正直言って、カッコイイ。記事によると、展示ブースの上に、「コンセプトカーのデザインのまま、世に出せないか。」という挑戦的なコピーが掲げられているが、これがこのまま街を走り回ったらさぞやドキドキするだろう。

 同社のデザイン担当者はハイブリッドスポーツの使命を語る。

「次世代につながるスポーツカー像や、その楽しみを提案していくのが目的です。今のままでは、スポーツカーというジャンルが世の中から取り残されて、一部のマニアしか目を向けなくなってしまう。子どもができてミニバンに乗る前に、一般の人たちもこういったクルマを楽しんで欲しい、そのためのCR-Zです」

 出展社数大幅減、外国勢参加は3社のみで、開催期間も短縮と、どこか寂しさだが感じられる今年の東京モーターショー。今年から、小学生以下だけでなく、中学生も無料にした。月〜木曜日は小中学校の特別見学日とし、昼食スペースも確保するという。

 大人たちがこぞって演出する「車に憧れましょう」キャンペーン。その成否が分かるのは、5年、10年後かもしれない。子供たちはスーパーカーを前に、どんな表情を見せるのだろうか。一人の車好きとして、メーカーからの熱い想いが、伝わることを願ってやまない。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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