欧州有数の国際空港、フランクフルト空港の環境マネジメント(前編)松田雅央の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年10月27日 12時23分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

松田雅央(まつだまさひろ):ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 貨物取扱量欧州第1位。乗降客数はヒースロー空港(ロンドン)、シャルルドゴール空港(パリ)に次ぐ欧州第3位。フランクフルト空港はドイツの空の玄関口、そして欧州のハブ空港として極めて重要な地位を占めている。

 しかし世界不況はここにも大きな影響を与え、貨物量と乗客数はともに減少、さらに第3ターミナル建設計画が延長されるなど経営上の課題は多い。その一方で騒音対策、省エネ、二酸化炭素排出削減といった環境対策は一層の充実が求められている。エコノミーとエコロジーの両立、つまりフランクフルト空港にとっての持続可能な発展とはどのようなものなのか。

 今回と次回の2回にわたり、空港運営会社Fraport AGの環境課長Dr.ペーター・マルクス氏へのインタビューからエコロジカルな空港のあり方を探ってみよう。

フランクフルト空港のロゴ(左、第2ターミナル)、手荷物検査場の入場ゲート(右)

第1ターミナルに駐機するルフトハンザ機(左)、貨物エリア(右)

「環境」「経済」「社会」を柱に持続可能な発展を

環境課長のDr.ペーター・マルクス氏

――はじめに環境課の業務を簡単にご説明ください。

課長 環境課は空港の環境マネジメントで中心的な役割を果たし、騒音対策、排水処理、ゴミ処理、省エネに関して責任を負っています。主な業務分野は以下の通りです。

  • 空港敷地内、および周辺地域の環境保全、森林保護、ビオトープ(生物の生息空間)保護
  • EUや国際組織、例えば国際空港委員会といった組織との環境分野における協働作業
  • 周辺自治体、州、国との環境分野における協働作業
  • 持続可能性委員会の主催
  • 騒音対策委員会の主催

――持続可能性委員会の役割は何ですか?

課長 空港の持続可能な発展に関する最高意思決定機関であり、環境課のほか、監査、企画課、人事課、(空港の)スポンサー、法務課の代表がメンバーを務めています。

――フランクフルト空港の運営には航空会社から小売店まで500ほどの会社が関与していますから、空港全体の環境対策を進めるにはフラポート社だけでなく、これら多様な会社との連携が必要ですよね。

課長 その通りです。(現在も連携はしていますが)相互関係をさらに深めるため、関連会社の代表を含めた新たな委員会を準備中です。また、強力な権限を持つ委員長職(環境マネージャー)を新たに作る予定です。

――環境課が作成した冊子『持続可能性レポート2008(Sustinability Report 2008)』の冒頭に概念図があり、それによると3本の柱が「空港の持続可能な発展」を支えています。3本の柱のうち「環境」と「経済」は分かりやすいのですが、最後の「社会」とは何を意味するのでしょうか。

課長 例えば自治体の持続可能な発展を思い浮かべてください。そこでは教育・福祉・労働といった社会的要素が非常に重要です。空港も同様で、労働者への教育、労働環境、福利厚生、安全や満足度の向上が重要になります。またフランクフルト空港はこの地域最大の雇用者であり地域社会と密接な関わりを持っていますから、その発展にも寄与しなければなりません。ちなみに、フランクフルト空港は「ドイツ国内で最も多くの人が働く職場」です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.