カー・オブ・ザ・イヤーから見る――2009年、エコカーの位置づけ神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2009年10月23日 15時20分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

 IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを務めている。


 10月21日、2009-2010 日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)が発表された(参照記事)。詳しくはニュース記事に譲るが、今年を代表するカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは、トヨタ自動車の「プリウス」。そして、輸入車部門のトップとなるインポート・カー・オブ・ザ・イヤーはフォルクスワーゲンの「ゴルフ」が受賞した。

カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたトヨタ自動車「プリウス」(左)。プリウスのチーフエンジニア、大塚明彦氏(右)

 特別賞3賞は、MOST ADVANCED TECHNOLOGYに三菱自動車の「i−MiEV」、MOST FUNに日産自動車「フェアレディZ」、BEST VALUEに富士重工業(スバル)「レガシィシリーズ」が選ばれた。

 筆者はこのCOTYで選考委員の1人として投票を行い、その結果を見守った。今回の時事日想は特別編として、その模様と結果の総評、そして今年のCOTYが示した「クルマの未来」について考えてみたい。

よく考えられたCOTYの選考システム

 開票結果が読みあげられる度に、会場内にどよめきが走る。今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)は過去30年の歴史を振り返っても、「史上、希に見る接戦。まったく結果が読めなかった」(ベテランの選考委員)だった。

 ここでCOTYの選考システムを簡単に紹介しよう。

 COTYでは、各メーカーがエントリーした「今年の新型車」の中から、選考委員の予選投票によって「10ベストカー」を選出。その後、本選考にて、この10ベストカーから1台の「カー・オブ・ザ・イヤー」を選ぶ。なお、カー・オブ・ザ・イヤーが国産車だった場合は、最高得点を得た輸入車が「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」になる。また特別賞は各選考委員による指名投票になる。

 COTY選考委員の数は毎年変わるが、今年は61人。本選考では各選考委員が25点を持ち点を与えられ、それを5台のクルマに配点するが、必ず「1台にだけ最高得点の10点を配点する」ことが条件になる。残り15点を4台にどう配点するかは自由だが、10点以上の点数は配点できない。

 この選考システムのポイントは、60人前後の選考委員から「どれだけ平均的に高得点を得るか」にある。極端な例だが、最高得点10点を半数の選考委員から得ても、残り半数がそのクルマに0点を付けたら、選考委員全員が6点を投じたクルマに負けてしまうのだ。同じ年に、魅力的なクルマが多数登場したら、おのずと接戦になる。今年が、まさにそれだ。

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