グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年10月16日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
日本経済新聞10月16日付朝刊の16面に2つの記事が並んでいる。
「百貨店6社が最終赤字」「百貨店アパレル4社 2社減益、2社赤字」。百貨店の苦境は繰り返し報道されているが、その百貨店を主要な販路とする大手アパレル4社もレナウンとサンエー・インターナショナルは赤字。残る2社のオンワードと東京スタイルも9割減益という、さんたんたる決算である。
百貨店と高級衣料は長く蜜月の関係が続いたが、百貨店は共倒れを避けるため各社ともユニクロを店内に引き入れている。10月9日には、高島屋が「2010年春に新宿店にユニクロを導入する」と発表し、その規模は都心部のユニクロとしては最大規模になるという。前掲の記事中では、「低価格衣料のシェアが高まっている」としているが、その勢いはとどまることはないだろう。昔日のように、誰もが高級衣料にあこがれることはなく、むしろそれはニッチな市場としてのみ存続するに違いない。
では、今日のアパレル市場におけるメインストリームはどこか。記事では「低価格衣料」という言葉が使われているが、昨今ではすっかりその言葉も定着した「ファストファッション」だろう。ファストファッションはなぜ、今日隆盛を誇っているのか。世界的な景気の低迷によって高級衣料から低価格なファストファッションへ顧客層が流れたという見方もあるが、それ以上に大きな要因がある。
それは、ファストファッションは従来ファッションへの関心が高くなかった層に対しても、「お金をかけずにトレンドファッションが手に入る」という魅力を提供し、顧客層のすそ野を広げ、自ら市場を創造したのである。
そのファストファッションの御三家といえば、スウェーデンのH&M、スペインのZARA、イギリスのTOPSHOPであるといわれている。2008年のH&M日本初上陸での大行列も記憶に新しいが、2009年はさらに新勢力の上陸も相次いだ。
その中心地が、ファッションの街といわれる原宿であり、そこではファストファッションの大激戦が繰り広げられているとメディアは繰り返し報じている。しかし、実際にそれぞれの店舗へ行ってみると、意外と顧客層が異なり、すみ分けができているのではないかと筆者は感じた。
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