ウォルマートVS. アマゾン 仁義なき価格戦争の行方は(2/2 ページ)

» 2009年10月20日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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Amazon化するウォルマート

 その「快進撃」に、ウォルマートが「待った」をかけようという。今まで「Web対策で後れをとった」と評されてきたウォルマートは、その後れを取り戻すべく、急ピッチでAmazon化を進めている。8月末には、中堅Webリテーラー3社をテナントとして迎え入れ、「ウォルマート・マーケットプレイス」を開設。一挙に100万品番を追加した。また、Amazonをはじめ、Web2.0企業の特徴であるコミュニティ機能にアイデアを得て、ウォルマート・ドット・コム・サイト上で、顧客と顧客、あるいはウォルマート社員が質問を投稿したり、質問に回答できたりするコーナーの展開にも余念がない。

 そして、今度は十八番である「低価格攻略」でAmazonに揺さぶりをかけようとしている。9月、10月といえば、米国の消費者がそろそろクリスマスの買い物を考え始めるころ。消費者の価格感度が最も高まる時期である。しかも、世界大恐慌以来の、大不況の只中ときている。ここに、書籍をはじめ、諸カテゴリーで圧倒的な安値を付けようというのがウォルマートの思惑だろう。すでに100アイテム以上の玩具を10ドルで販売するというキャンペーンを開始している。

「価格」ではない、競争要因の模索

 ウォルマートとAmazonの価格対決は、過去に考えられてきた「価格競争」の定義を全く無意味なものにしてしまう。かつて「価格競争」とは、商品カテゴリーでくくられた「業界」内で行われるものだった。しかし、今日では違う。1980年代に「カテゴリー・キラー」という新語を生んだ米トイザラスも、ウォルマート、そしてAmazonの攻勢に負け、今ではすっかり影を潜めてしまった。

 「価格競争」がハイパー化した今日、「価格」で競えるのは、事実上、ウォルマートとAmazonの2社だけになった。では、他社はどうすればよいのか。

 書籍市場を例にとると、かつて街をにぎわせていた独立系の本屋は、ここ10年で淘汰の一途をたどってきたし、その動きはこれからも加速するだろう。今日、生き残っている本屋というのは、「コミュニティ」をキーワードとして、購買に限らず、総合的な店舗体験の充実、顧客の帰属意識の創造に努めている店舗である。「コミュニティ」といっても、地域的なものに限らず、趣味、主義、嗜好やライフスタイルなどでくくられる、どの「部族」にアピールできるのか、ということを、考え抜いた店舗が熱烈なファンを創出して成功している。売れる仕組みが大転換しているということだ。

 米国で起こっていることは、対岸の火事ではない。ウォルマートとAmazonの抗争が起こす津波は、間違いなく日本にも襲ってくる。業界、業種にとらわれず、自社にとって、新しい時代の競争の決め手とは何なのか、それを再定義する必要がある。(石塚しのぶ)

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