コラム
» 2009年10月19日 07時50分 UPDATE

藤田正美の時事日想:この国で……“コンクリートプロジェクト”が止まらなかった理由 (1/2)

民主党政権が誕生して1カ月が経過したが、私たちはこの政権をどのように評価すればいいのだろうか。政治の透明性や脱官僚といった点では、自公政権のときよりも、民主党の方が“一歩”リードしている感じだ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 民主党政権が成立して1カ月が過ぎた。これほどマスコミの注目を浴びた政権はなかっただろうと思うくらい、露出度が高い。大臣はじめ政務3役が、テレビなどにも積極的に出演している。従来の自公政権のときよりは、民主党の方がより率直であると感じられる。日本の政治で最も欠けているのは透明性であると思っていただけに、民主党政権になって少なくとも透明性に関してはまだまだ十分とは言えないまでもいい方向に進んでいると思う。

官僚の行動原理

 それにしても2009年度の補正予算の見直しは大変そうだった。副大臣と政務官が書類と首っ引きで電卓をはじく様は、気の毒に思えたほどである。今までだったら、そういった作業は官僚任せ。官僚が上げてきた案を、基本的には丸呑みするのが政治家だった。だからこそ、民主党のいう農業政策は我が農水省のラインとは違う、などという事務次官の「勘違い発言」が生まれてくる。官僚にとって政治家は、自分たちの政策を実現するための駒でしかないように思っている証左である。

 確かに官僚は政策のプロ(であるはず)だし、資料なども大量に持っている。しかし同時に官僚の行動原理は、自分が属する組織が大事なのである。それは自分の将来の運命を握っているのが組織であるからだ。組織からはじき出されたら、よほどの自信と実力がない限り安定した“第2の人生”は送れない。

 それが政策の固定化を生む。先輩が決めてきた政策を転換するのは、「先輩批判」になるからである。57年前から始まっている八ツ場ダム建設がいまだに本体工事に取りかかっていないことも、その57年間の間に事情が変わっているのに、計画を推し進めようとする力だけはなくならないのも、そういった「官僚慣性力」の問題である。ほとんど実現性はないと分かっているのに、高速増殖炉や核燃料サイクルといったプロジェクトが中止にならないのも同じことだ。

 自公政権とりわけ自民党政権は、官僚の慣性力に加えて族議員というサポーターがいるのでなおさらコンクリートプロジェクトはいったん動き出したら止まらない。その意味では、民主党政権に代わって慣性にストップがかかっただけでも意味がある。

 羽田空港のハブ化構想もそうだ。誰が見ても滑走路が2本しかなく24時間運用ができない成田空港では国際空港としての機能が不十分であることは明らかだ。それなのに、成田空港を国際空港として羽田は国内空港にするという前提で成田をゴリ押ししてきた関係もあり、今さら羽田を日本の基幹空港にするとは誰も言えなかった。しかも成田空港反対運動の中で、犠牲者も出ているのだからなおさら方針転換など言い出せる人は誰もいなかった。

 前原国土交通相の羽田ハブ化発言は、大げさに言えば、航空行政や航空業界に関わるすべての人が思っていたことをはっきりと口に出したにすぎない。だから森田千葉県知事が怒ってみせたのも、そう言わざるをえなかっただけの話だ。成田と羽田の一体運用と聞いて納得した形をとったが、実際のところ一体運用することは、発着枠などを考えれば森田知事も「落としどころ」は初めから分かっていたはずなのである(もちろん千葉県庁の官僚も承知していただろう)。

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