第15鉄 利府支線で行く、仙台のミニ鉄道博物館杉山淳一の +R Style(2/3 ページ)

» 2009年10月17日 08時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 その肥沃な穀倉地帯を貫いていた東北本線は、のちに利府以北が廃止された。利府支線は利府の町と仙台を結ぶローカル線に格下げされたが、国鉄の統計上は東北本線の一部とされた。これが生き残りの理由になった。1968年に国鉄の赤字ローカル線を整理するとき、利府支線は独立したローカル線ではなく、東北本線の一部となっていた。そのため利府支線は廃止路線リストから外れたというわけだ。後年、利府地域は住宅開発が進み、ワールドカップを開催するためのサッカースタジアムができた。利府支線はサッカー観戦客輸送にも一役買っている。それは線路があったからこそだろう。「鉄道が残って良かった」と誰もが思ったに違いない。

利府支線は2両編成。利府駅にて

 次の大きな変化は1979年。この地域に東北新幹線の試験線路が設けられ、その管理所が利府に作られた。ここを拠点として、新幹線の車両工場、車両基地が作られた。管理所は現在、JR東日本新幹線総合車両センターとなっている。利府支線は利府の人々が仙台中心部へ向かうための通勤生活であると同時に、車両センターで働く人たちの通勤路線にもなっている。また、利府支線は在来線の線路を車両センターへつなぐ役割もある。新幹線用の部品を在来線の貨物列車で供給しているようだ。

最初のカーブを曲がるともうJR東日本新幹線総合車両センターが見える(左)。東北新幹線車両基地を眺める(右)

車両センター通勤者のために作られた新利府駅

 利府支線の左の車窓に見えるのが、JR東日本新幹線総合車両センターである。岩切駅を出て、新幹線の高架をくぐるとすぐに線路が左に分岐して、車両センターの構内に加わる。その向こう側にたくさんの線路が現れる。まずは東北新幹線の留置線だ。新旧の新幹線車両たちがズラリと並ぶ様子が見える。ここからが鉄道ファンの「ワクワクドキドキ」の始まりだ。新幹線電車の先頭から最後尾まで眺めて、留置線の線路が収束していくと建物にさえぎられ、小さな駅に到着する。ここは新利府駅。1982年、東北新幹線が開業した年に設けられた。車両センターに通勤する人のための駅だ。一般客も利用可能な改札口もあるが、車両センターの正面玄関からはかなり遠い。

 新利府駅から利府駅までの眺めも、鉄道ファンにはうれしい風景だ。ここからの車窓は車両工場になる。既に引退した車両、これから走り始める新製車両、点検整備が終わってピカピカに磨かれた車両が並んでいることがある。どんな車両が見られるかは乗ったときのお楽しみだ。

幸運なことに新型新幹線E5系がいた!(左)続いて東北新幹線の二階建て車両が登場(右)

SLから貴重な試験車まで見られる、触れる

 利府駅前のロータリーを出たら左へ。2つ目の信号をまた左へ曲がる。しばらく歩くと利府線を潜るアンダーパスが見える。

利府駅には屋台村が。見学前に腹ごしらえしよう(左)。入り口すぐの広場に保存舎展示場がある(右)

 右側の側道に入り、線路に沿った道を歩いていくと、やがて正面に生け垣が見える。その木々の隙間から黒い鉄の塊がチラチラ見えると、鉄道ファンの心のアンテナが反応しはじめるに違いない。新幹線の車両基地なのになぜ? とも思うが、はやる気持ちを抑えて守衛所に来意を告げよう。所内に一歩踏み込めば、たくさんの保存車両が出迎えてくれる。SLから電気機関車、新幹線試験車もある。建物内には展示ルームがあり、小さいながらもNゲージレイアウトが来訪者を楽しませてくれる。

 展示車両の一部には簡単な説明書きも添えられている。蒸気機関車はC11、C58、D51の3台。電気機関車は交流用の赤い機関車ばかりで、ED71、EF71、ED75、ED77、ED78、ED91の6台。そして新幹線車両の200系、961形試験車、952・953形試験車だ。

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