コラム
» 2009年10月15日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:厳しい時代の今、“クリエイター・シンキング”に学ぼう (1/2)

金融危機の到来で社会情勢が急変する昨今、従来のビジネス思考術が通用しなくなっている。ならば、これまで頼りにしてきた処世術の本は閉じ、自分と闘い、自分のキーワードを見つけてきたクリエイターの思考術に学んではいかがだろうか。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン


 通勤電車、隣で本を開く人がいた。ページの見出しがふと目に入る。いわゆる“処世術”の本だ。「どう生きるか」「心の鍛え方」「感情のコントロール」……こんなことが書かれた本を読む人が増えている。

 気持ちは分かる。昨今は雇用調整助成金をもらう会社が目立つ。会社勤めの知人たちは混迷の職場で苦闘する。転職はままならないし、とどまってもリストラの危機。会社に勤めない人は、小さな仕事をいかにゲットするかで日々苦闘している。私もそう。そんなある日、インタビューしたグラフィック・デザイナーがこう言った。

 「“生きる”がテーマです」

 “生きる”をデザインに取り入れるのが、彼のテーマだという。“グラフィック・デザイン”と“生きる”、それはどのようにつながるのだろうか?

 「ぼんやり生きていては流されるから、“生きる”ということを創作に込めたいんです」と彼は言う。その手元には、ある種の紙で植物を育てるという実験的なデザインがあった。紙はごく身近なもの、育てる植物もごく身近なもの。だが、その異質な組み合わせで生命を維持するという発想は斬新だ。その作品と彼の言葉に触れ、「“生きる”ってどういうことだろう?」と考えさせられた。

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自分のキーワードを持つ

 クリエイティブ事業に携わり、デザイナーやアーティストと呼ばれる人々(合わせてクリエイターと呼ぶ)と日常的に付き合いだして月日が経った。彼らは、普通の人間よりも闘い続けるスタミナがある。一心不乱に制作する瞬発力もある。しかもリングに立つのは1人だから、孤独に耐える強さも持つ。

 闘う上では道具とも格闘する。絵描きなら絵筆の技術や色彩センス、デッサン力。書家なら筆はもちろん墨や書道紙との相性、イラストレーターならPCソフトウエアの操作。まあこれらは格闘技でいえばボクサーグローブやトランクス、マラソンならシューズなので、仕事をする上では当たりまえだ。しかし、さらに営業や人脈作りという、クリエイターに向いていない闘いもしなければならない。それは彼らにとって神経を磨り減らす格闘でありガマンでもあるが、それも必要だ。

 スタミナや瞬発力、道具、対人関係作りは、ビジネスパーソンの武器と似てはいる。しかし、両者の立場を知る私は、そこに決定的な違いがあると考える。

 それはキーワードの重さだ。クリエイターは“生きる”のような、一生追い求める、大きくて深くて広がりがあるテーマを考える。そこから作品に個性が生まれ、創造する衝動が持続する。例を挙げてみよう。

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