新たな職種層、“ゴールドカラー”の登場ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)

» 2009年10月12日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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選ぶ視点で考える人

 もう1つの特徴は、彼らは「誰にも使われない人である」ということ。ブルーカラーの人もホワイトカラーの人も、結局は「使われている=雇われている」人です。部長や課長や工場長や社長の指示を受けて仕事をしています。

 一方、ゴールドカラーの人たちは、形式上は雇われていますが、実際には仕事を自分で主体的に選んで、しかもどんどん転職していく。時には自分で会社を作ったりもする。日々の仕事においても、自分でやるべき事を判断、提案しながらやっていく。指示されて作業するのではなく、成果で評価され、その達成方法は自分で考える(任されている)人たちです。

 先ほど例に出したチーフエコノミストも、投資銀行から給料をもらっていて「雇われている」わけですが、別に首になっても大した問題ではないし、首にならなくても時期がくれば自分で次の仕事を選んで転職していくという人です。使われているわけではなく、対等の立場で雇用契約を締結し、報酬をもらっているという感じです。

 もっと言えば、自分のキャリア形成や、自分が人生で達成したいことのために、適宜必要な大学や会社を“利用・活用している”のです。これが、ゴールドカラーの人の特徴です。「どうやったら自分は選んでもらえるか」ということを気にしない人たち。「次は何を選ぼうか」と“選ぶ視点”で考える人たちです。

3代で定着

 もう1つ、その本の中で印象的だった点、それは「こういった社会層は発現から3代で定着する」ということでした。

 ブルーカラーとホワイトカラーの分化が始まった頃は、お父さんは農家、お兄さんは工場で働いて、弟が大企業でホワイトカラー、ということがあり得た。しかし、3代経つと大半の家は「家族全員がブルーカラー」か「家族全員がホワイトカラー」というように「家族ごとに分離・定着」してしまう、と。そして今後は同じことが、ホワイトカラーとゴールドカラーにも起こりますよ、と予想するのです。

 ここ数十年は過渡期なので、1つの家に、長男はゴールドカラー、次男はホワイトカラー、三男は親の農地を継いで耕作している、みたいなことがあり得る。しかし、3代経てば、「父も母も兄も妹もゴールドカラーの家」というのが出てくる。一方、「ゴールドカラーの人なんて親戚中に誰もいない。全員ホワイトカラーだよ」という家も出てくる。ゆっくりと、でも確実に、今の「ホワイトカラー家庭」は、「ホワイトカラー家庭」と「ゴールドカラー家庭」に分化しつつある、ということです。

 今、自分の子どもに対して、「いい大学を出て、いい会社に入れる(=いい会社に選んでもらえる)ように育ててあげたい」と考え、高い塾の授業料を払いながらお受験をする家庭は多いですよね。でも、そういう方法では「ホワイトカラー予備軍」しか育ちません。

 では、国際的に活躍できるよう英語を学ばせればいいのでしょうか。そうではありません。なぜなら「親に言われたから英会話学校に通っている」というのは、「指示されたことをやる人」に過ぎないからです。

 ゴールドカラーとは自分で道を選ぶ人たちです。小さい頃から“他人と違う言動”を褒めてもらえ、突拍子もないことを言い出してもむしろ応援してもらえる。そういう環境から彼らは育っていくことでしょう。ある意味では「素直なよい子」とは対極にあるところから、そういう人たちが育っていくのかもしれません。

 それもちょっと楽しみだったりします。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。

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