元優等生の暴走族総長は、なぜ覚せい剤中毒になったのか?――杉山裕太郎さん (前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/5 ページ)

» 2009年10月09日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


全国各地で講演ライブ活動を行う杉山裕太郎さん(写真右)。写真は2008年10月、東京都板橋区成増アクトホールにて

 2009年夏、人気芸能人の薬物汚染が相次いで発覚……押尾学被告と酒井法子被告だ。とりわけ後者は、一世を風靡した人気アイドルの覚せい剤の所持・使用による起訴ということで世の中はまさに騒然となった。

 「芸能界の覚せい剤汚染の実態解明か?」などと、新聞や雑誌に刺激的な見出しがあふれたのは記憶に新しい。もちろん、社会的影響力の大きい芸能界の汚染は重大事だろう。しかし覚せい剤汚染をめぐるより深刻な問題は、職業や年齢を問わず、社会に広く浸透していることだとも言える。

 過去5年間の覚せい剤事犯の検挙者数を見ると、1万2000人から1万5000人に増加した。再犯率も毎年5割を超え、しかもその大半は釈放後2年以内である。また検挙者は芸能人やアーチストはもとより、スポーツ選手、国会議員、教師、ビジネスパーソン、主婦、学生などだ(警察庁、厚生労働省、海上保安庁データ)。

 入手ルートも、かつてのようなヤクザとの直接取引だけではなく、外国人やインターネットなど、そのチャンネルは多様化している。今や、日常生活の延長上に覚せい剤は存在し、顔見知りの、しかも“ふつうの人”がいつ検挙されても不思議ではない時代になっている。

 こうした社会の現状に一石を投じようと立ち上がった男性がいる。杉山裕太郎さん(35歳)だ。

 彼は若き日、暴走族の総長として傷害事件などに関与して逮捕されたほか、覚せい剤を常用して深刻な中毒に苦しむなど、人生のどん底を経験した人物である。両親の愛情に触れて更正に成功し、今では「魂のヴォーカリスト」として、覚せい剤の撲滅を含めた青少年の健全育成のために、全国各地でライブ活動(講演+歌)を展開している。さらにはラジオのDJ、そして俳優としても多忙な日々を送っているという。

 今回のインタビューは、「酒井法子保釈、記者会見」(9月17日)の映像が流されているのをリアルタイムに横目で見ながら、大手町のカフェで行われた。

 杉山さんはどういう経緯で道を踏み外し、なぜ覚せい剤を常用するようになったのだろうか? そして彼は、どうやって覚せい剤中毒から立ち直っていったのだろうか? さらには、そうした一連のプロセスを経た彼だからこそ見える「真実」とは一体何なのだろうか? それを今週と来週の2回にわたってお伝えしたいと思う。

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