環境+クルマ=未来が少し見えてきた…… フランクフルトの国際モーターショー(後編)松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年10月07日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

静か過ぎて困ります!?

 こういう室内コースを使えるのも排気ガスが少ないハイブリッドカーならではの芸当だ。通常のエンジン車が屋内コースを走ったとしたら、いくらホールの換気を強くしても耐えられたものではない。さらに、Activ Hybrid X6は時速65キロまでは電気モーターを用い無音で走ることができる。「音が全くないと、クルマを運転する醍醐味が半減するのでは?」という司会者の質問に対し、開発担当者は「深夜、静かな住宅地を無音で走る場面を想像してください。住民に迷惑をかけることなく走れることも運転者の喜びのはずです」。もしかすると、ハイブリッドカーはこれまで音と振動を楽しんできた自動車ファンには不評かもしれない。

 それはさておき、静音性の高いハイブリッドカーは実用面でもさまざまな副次的現象を起こしている。「ハイブリッドカーが近づいてきても気がつかないので危ない」という話のほか、先日取材したカーシェアリング会社も問題を抱えていた(関連記事)。その会社ではトヨタのプリウスを使用しているが、発進時のエンジン音がないため「クルマが故障しているのでは?」との問い合わせが後を絶たないそうだ。毎日乗る自家用車なら問題ないが、初めて乗る人は確かに違和感を感じる点であり、この会社ではついに使用を止めたそうだ。皮肉な話ではあるが、こういった問題は弊害というよりもエコ車が社会に普及する過渡期の現象というべきだろう。

BMWの巨大なブース。右上部が屋内コース(左)、BMWのブースに設置されたステージ(右)

電気自動車の実用化は間近

 IAA 2009でハイブリッドカーと並び注目を集めていたのが電気自動車だ。

 例えばメルセデス・ベンツがSmartをベースに開発した「E-Smart」は実用化を前にした社会実験段階にあり、ベルリンでテスト利用者を募り100台を走らせている。リチウム電池を使用した電気自動車の技術はすでに確立しているが、それを実社会でどのように利用するか、充電はどのようなスタイルが適しているか、充電ステーションの最適配置は、といった部分がまだ不明だ。そのためベルリン市内に500カ所の充電ステーションを設置して利用形態の研究を進めている。説明員によれば2009年末にベルリン地区でリースが開始されるという。

 電気自動車の普及に注目するのは自動車メーカーだけではない。エネルギー供給会社e・on(エーオン)はMINIをベースとした電気自動車を用いてミュンヘン地区で社会実験を行っている。e・onの充電ステーションは15カ所と少数だが、MINIは家庭用のコンセントから直接充電が可能なので、必ずしも多数の充電ステーションを必要としない。将来的には電力供給会社がガソリンスタンドを模し、全国に「充電スタンド」を展開するかもしれない。

メルセデス・ベンツのブースに展示された電気自動車「E-Smart」(左)、e・onの充電スタンドと電気自動車タイプのMINI(右)

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