水素充填を初体験。究極のエコカー、ホンダ「FCXクラリティ」に乗ってみた (後編)神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2009年10月05日 13時15分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


 水素と酸素を化学反応させて電気を取り出し、その電力でモーターを動かして駆動力を得る。電気自動車に“化学発電所”を内蔵した燃料電池車(FCV)は、水素をエネルギー源として消費し、排出するのは水のみ。しかもEVと異なり、1回の水素充填(じゅうてん)で航続距離は約600キロを超えるという「究極のエコカー」だ。

 筆者はこのFCVのひとつ、本田技研工業(ホンダ)の「FCXクラリティ」に東京近郊で試乗する機会を得た。前編に引き続き、今回の時事日想も特別編として、FCXクラリティのレポートをお届けする。

 →水素で走る究極のエコカー、ホンダ「FCXクラリティ」に乗ってみた(前編)

ホンダ「FCXクラリティ」

未来的で高品質なFCXクラリティのデザイン

 FCXクラリティのデザインは、“エコ”を指向する21世紀ホンダを象徴するものだ。写真を見てもらうと分かるが、その姿はかなりインサイトに似ている。とはいえ、これは逆で、そもそもFCXクラリティのデザインが先にあり、そのデザインテイストを生かす形でインサイトのデザインが生まれたのだ。

インサイト(出典:本田技研工業)

 エクステリアデザインを間近に見ると、FCXクラリティはとても流麗でスマートだ。全長4845ミリ、全幅1834ミリ、そして全高が1470ミリというフォルムは、BMW 5シリーズやアウディ A6などEセグメント級であるが、インサイト同様に空気抵抗を減らすためアーチを描くようなワンモーションのデザインはあまり大きさを感じさせない。

 また、モーターを積むフロント側はオーハーハングが切り詰められており、とてもスポーティだ。一方でキュッと引き締まったリア周りのデザインなどは、ラテン系のクルマを感じさせるほどセクシーである。全体的な印象はインサイトに似ているのだが、ホンダ車とは思えないほど、瀟洒(しょうしゃ)かつ上質でオトナな印象である。

 一方、インテリアデザインに目を向けると、こちらも上質で、しかも随所に未来的なテイストが盛り込まれており、とても好ましいものに仕上がっている。

FCXクラリティの内部

 まず「上質さ」の部分では、植物由来のエコ素材「ホンダ バイオファブリック」に注目したい。これはトウモロコシ由来に成分を使った複合素材で、従来の石油系ポリエステルより石油エネルギーの使用を10〜15%削減できるものだという。しかもエコなだけでなく肌触りもとてもやさしくなめらかで、筆者ははじめ本革が使われているのかと錯覚したほどだ。このバイオファブリックは前後のシートだけでなく、アームレストやドアの内張、コンソールトレイなどに使われている。上質で高級感があり、しかもエコな内装なのだ。

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