もてなしのプロ“芸妓さん”の世界とは――京都花街の経営学(1)(1/2 ページ)

» 2009年10月02日 10時16分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


『京都花街の経営学』(西尾久美子著、東洋経済新報社)

 京都花街、そして芸妓さん、舞妓さんたちの世界は、室町末期から現在に至るまで350年にわたって続いてきた日本の伝統文化の1つと言えます。

 でも、花街について、ほとんどの方は表面的なことしか知らないと思います。また、しばしば間違った理解や偏見を持っていることもあるでしょう。しかし、その独特の風習やしきたり(ルール)は、長い歴史の中で培われたものであり、一定の必然性があるのです。

 経営学の視点でこの世界を徹底的に分析し、分かりやすく説明してくれている本があります。それが『京都花街の経営学』(西尾久美子著、東洋経済新報社)です。

 同書は、京都花街の仕組みや、芸妓・舞妓さんたちのキャリアを実地体験も踏まえて深く掘り下げて研究した博士論文を元に書かれたもの。今回のシリーズではこの本をじっくりご紹介していきます。第1回はイントロダクションです。

富裕層向けの高度なおもてなしのサービス

 京都花街が提供しているのは、端的に「富裕層向けの高度なおもてなしのサービス」と言えます。このサービスのメインキャストはもちろん、「もてなしのプロフェッショナル」と呼べる芸妓(げいこ)さん、舞妓(まいこ)さんたちです。

 彼女たちは、単に舞いや小唄などの伝統芸能ができるだけではダメなのです。「お座敷全体の場の雰囲気を顧客にとって心地よいものにする」空間プロデューサー的な役割も求められるのです。

 また、お座敷を提供するのが、いわゆる「お茶屋」です。お茶屋もまた、高い顧客満足を目指し、顧客に対する深い理解に基づいた、「最適なサービスの組み合わせ」を実現できるようベストを尽くしています。

 企業が顧客に提供する「サービス」の質の重要性がますます注目されている昨今、京都花街のメカニズムや芸妓・舞妓さんの提供するサービスの極意を学ぶことは大きな意義があるのではないでしょうか。

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