管理職のマネジメントに問題があると感じる事件は、2007年10月にも起きている。
ある製薬会社に勤務していた男性(当時35歳)が、自殺をした。遺族は、その会社の最寄の労働基準監督署に労災を申請したが、認められなかった。遺族はその処分取り消しを求め、裁判に訴えていた。
東京地裁では、裁判長が上司の部下への言動を「男性の人格、キャリアを否定する内容で過度に厳しい」と指摘した。そして、国(=労働基準監督署)に処分の取り消しを命じた。
この一例だけですべてを判断するのは、無理がある。 だが、労働事件を取材すると、上司と部下とのあつれきの話をよく聞く。上司が社長のような強い権限を持ち、部下に退職を迫ることすらある。
管理職などのミドル層の改革をテーマに活動をする人事コンサルタントの重光直之さん(ジェイフィールの執行役員)はこう答える。
「私はミドル層の権限を強くすることに、必ずしも賛成しません。プレイングマネージャーが増えているなど、今のミドル層の置かれている状況は心得ています。しかし、権限を強くすれば業績が上がるとは言い切れない場合があります」
さらに、厳しい指摘をする。
「権限を強くすると問題が解決すると考える以前に、ミドル層はやるべきことがあります。そもそも今、ミドル層がマネジメントをしていく上での中心の課題は、部下の内発的動機をいかに高めるか、ということ。つまり、部下が仕事とどのように向かい合い、いかにしてモチベーションを上げるように誘うか、といったことが求められているのです。
ミドル層の権限を強くすることは、ある意味で、危険な兆候でもあると私は思います。権限を強くすれば、ミドル層の育成も実はできなくなってしまいます。中長期的に見ると、むしろ、マイナスになるのではないでしょうか。まずは、マネージャークラスの仕事に対しての責任感を高めること、その上で権限の強化です」
中間管理職のあり方を考えることは、意味の深いことだと思う。そうでないと、次世代を担う20代〜30代が報われないからだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング