“ブランド”ではなく“雰囲気”――無印良品の強みとは郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2009年10月01日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン


 食品中心の40アイテムから、暮らしを満たす7500アイテムへ。

 9月18日にリニューアルオープンしたばかりの無印良品池袋西武店の売り場を歩き、その成長ぶりを改めて感じた。29年前、西友の売り場で「わけあって、安い。」で始まった無印良品(参照リンク)。安さだけを追求するほかの流通系PB(プライベートブランド)とは異なり、10代から60代まで幅広い年齢層の“ムジラー”に支持されている。

 “無印”という名前の通り、ブランドを否定して始まった無印良品だが、やはり“ブランドパワー”は感じてしまう。「無印って何なのだろう?」を考えたくて、池袋西武店に買い物兼取材をした。

心を“しぜん”にする広告コピー

 欲しかったのは、1枚100円のリニューアル記念限定イラスト入りのエコバッグ。深澤直人氏のデザインなど7枚をゲットした。

 やれやれとほっとして、2階ギャラリーで行われている「無印良品の理由(わけ)展」へ。過去29年の歴史を伝えるポスターの展示。取材開始まで5分ほど“無印のことば”を眺めた。

しぜん 飾らない 見立て 定番

どこにでもあるけど どこにもない 平凡な非凡 水 空気

 無印良品の広告コピーである。読んでいるだけで心が“しぜん”になる。1階のスキンケア売り場に降りて、良品計画宣伝販促室の片寄美恵(かたよせ・みえ)さんと会った。

 「池袋西武店は女性のお客さまが多いので、スキンケア、ヘアケア、メイクに注力したんです」と片寄さん。

 1階エントランスのスキンケア売り場は33坪以上と広く、品揃えも多岐にわたる。自分でお試しできる開放型のパウダースペースは無印初。大きなミラーの前で“塗り塗り”“パタパタ”やる女性がひっきりなし。飾らないスタイルで、自分を飾れるスペースだ。

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