インタビュー
» 2009年09月25日 10時00分 UPDATE

あなたの隣のプロフェッショナル:年収7万円の男が、プロの編曲家になるまで――制作プロデューサー・高野康弘さん (1/4)

ミッチーこと及川光博さんの曲のアレンジを手がける、制作プロデューサー・高野康弘さん。大学を中退し、バンド活動を続けるものの、年収は7万円。貧乏生活を送っていた彼は、どのようして大物アーティストの曲をアレンジするようになったのだろうか?

[嶋田淑之,Business Media 誠]

「あなたの隣のプロフェッショナル」とは?:

人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。

日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏です。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。


yd_oikawa.jpg 前略、月の上から。』(作詞・作曲:及川光博、編曲:ローズ高野)

 及川光博さんと言えば、長きにわたって八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せている人気アーチストのひとりだ。

 筆者は個人的に、テレビ朝日の刑事ドラマ『相棒』における水谷豊さん演じる杉下右京警部の新しい相方としての及川さん注目している。しかし多くのファンにとって、それ以上に注目されるのが及川さんのミュージシャンとしての活動かもしれない。

 テレビ東京で7月からオンエアされたドラマ『俺たちは天使だ! NO ANGEL NO LUCK』。そのオープニングテーマ『前略、月の上から。』を作詞・作曲し、自ら歌った及川さん。そして、この曲のアレンジ(編曲)を手がけたのが、今回ご紹介する高野康弘さん(42歳)である。

 高野さんは現在、前回ご紹介したCHAGE and ASKAのマネジャーそしてディレクターとして活躍してきた村田努さん(44歳)と同じクリエイター集団「匠」に所属。そして村田さんたちとともにバンド「ロズかま」を結成し、活動している。

 果たして高野さんとは、どのような人物なのだろうか? そしてアレンジャー(編曲家)とは、一体どのような仕事なのだろうか?

 →ある大物アーチストと歩んだ日々……彼から学んだことは? 制作プロデューサー・村田努さん

初めから音楽家を志向した人生

yd_takano.jpg アレンジを手がける高野康弘さん

 高野康弘さんは1967年、静岡県掛川市に生まれた。天秤座のO型。

「3歳ころからヤマハ音楽教室でピアノを習っていたんですが、ここで絶対音感教育を受けました。これは今でも役に立っていると思います。そして中学校からはブラスバンド部に入部してトロンボーンを吹きました。部長として、学校創立以来初の県大会出場を実現し、すっかり調子に乗りまして。大会では指揮者まで務めたのですが、審査員から指揮を酷評され、へこみましたね。トラウマになっています」と言って大笑いする。

 将来、作曲や編曲の仕事をやりたくて音大を目指した高野さんは、高校時代、ピアノのレッスンを再開する。ベートーベンのピアノ・ソナタなどに取り組んだそうだが……。

 「ピアノを打楽器的に弾いていたせいか、先生から『あんた、デタラメね! あんた、音大はムリ』ってきつく宣告されちゃったんですよ。でも、そんな言い方をされても、やる気が出たのは私に“Mッ気”があったからかな」とまた大笑い。

 日本の音楽教育の中で、高野さんの演奏スタイルは受け入れられなかったようだ。一瞬、方向を見失いそうになった高野さんだが、中学時代にやりたいと思っていたドラムをやり始める。そんなある日、東京の大学に進学していた先輩からこんなアドバイスを受けた。

 「『大学で音楽をやるんだったら慶應義塾大学か成城大学がいいぞ』って言うんですよ(笑)。今にして思えば、意味不明なアドバイスなんですが、地方にいて情報がなかった当時の私としては『へえ、そうなんだ』って信じるしかなかったんですよ」

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