コラム
» 2009年09月24日 10時50分 UPDATE

相場英雄の時事日想:フルラインアップ経営は必要か――スリム化に踏み切れない在京紙 (1/2)

採算のとれなくなった事業を整理・縮小し、企業の再生を図ろうとする企業は多い。一方、こうした情報を伝えている側のメディアはどのような状況なのだろうか。広告不況や購読部数が減少する中、スリム化がなかなか進まないメディア界の一端を紹介しよう。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、『完黙 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥津軽編』(小学館文庫)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。


 「◯△企業、大規模リストラに着手=事業規模縮小へ」――。

 昨秋以降の不況の中で、このような見出しを目にしない日はない。製造業や流通業を中心に、採算のとれなくなった事業を整理し、企業自体を再生させようとする試みが日夜続いている。こうした情報を伝えている側のメディアはどうなのか? 今回の時事日想は、スリム化に逡巡するメディア界の一端を紹介する。

中核取材拠点閉鎖の“きな臭い噂”

 「あの社が中核地方都市拠点の閉鎖を決めるらしい」(雑誌記者)――。昨年、ある在京紙の話題が業界内をかけめぐる一幕があった。同紙が北日本、九州の拠点をそれぞれ閉鎖し、両地のニュースをすべて通信社の配信でまかない、思い切ったスリム化を図るというのが噂の中身だった。

 また、同社が地方ブロック紙の傘下に入るとの観測も流れた。たまたまメーンバンクが同じだったことも幸いし、経営体力に勝るブロック紙の首都圏進出の橋頭堡(きょうとうほ)としてこの在京紙が使われる、という内容だ。

 購読者の減少に歯止めがかからず、世界的な不況とともに広告出稿量も激減。在京紙の大半が経営立て直しに奔走する中で広がった噂だけに、「いよいよメディア界の再編が始まる」(同)と身構えた向きが多かったのは事実だ。だが、この噂はいつの間にか立ち消え、噂にのぼった両社は今まで通り独自の経営を続けている。

 筆者が両社のメーンバンク筋に尋ねたところ、「噂は承知しているが、具体的な交渉があったとは聞いていない」と否定された。だが、複数の関係筋によれば、両紙幹部が意見交換を行ったことは事実だったようだ。

 では、なぜこの再編話が“きな臭い噂”で終わってしまったのか。そこには、フルライン経営にこだわり続ける在京紙の古い体質がある。フルラインとは、全国各地、あるいは世界の主要都市に取材網を設置し、あくまでも自前のニュースにこだわる姿勢を指す。

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