花王のWebコミュニティ「ピカママ」運営の裏側(2/2 ページ)

» 2009年09月18日 08時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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参加者の3人に2人がコメントを投稿したコミュニティも

 ピカママでは当初、新米ママさん向けのコミュニティのみを提供し、「花王製品について語れるコミュニティ」はあえて作っていませんでした。企業臭を出しすぎないように控えめに振る舞っていたのです。

 しかし、登録ユーザーの方から、「なぜ花王製品のコミュニティがないのか?」という要望が寄せられたため開設したのが、「柔軟仕上げ剤」「お尻フキ」などの製品について語るコミュニティです。花王では、こうした製品コミュニティでの発言を分析することにより、多くの知見を得ています。

 また、コミュニティを通じて、花王製品のブランドサイトに行くユーザーが確実に増えることが確認されています。要するに、製品情報を提供しているサイトへの集客効果があるというわけです。

 柔軟仕上げ剤のコミュニティについては、参加したユーザーのうち実際に発言した人が何と66%に上りました。つまり、3人に2人は、何らかのコメントを投稿したということです(逆に言えば、ROM:Read Only Memberは3人に1人)。アクティブな人がそれだけ多く存在したということです。

 一方、お尻フキのコミュニティでは、ユーザーが別のユーザーを説得するという現象が見られました。あるメンバーが、「花王のお尻フキは、フタが固くて開けにくい……」と問題視する投稿をしたところ、別のコミュニティメンバーが、「花王さんのことだから、むしろ簡単に空いてしまわないようにあえて固めにしてあるのでは……?」などと援護するような発言があったそうです。

 また、お尻フキにはトイレに流せるものと流せないものの2種類があるそうですが、コミュニティで得た知識を元に、小売店に対し、流せない方の製品を置いてくれるように頼む人が現れました。つまり、消費者が花王のセールスマンの代わりをしてくれたわけです。

 以上のように、花王ではピカママの運営を通じて、ネットコミュニティがもたらすマーケティング効果をきっちり検証し、製品作りに反映させているのですね。

 花王のWebサイト(全体)は日本ブランド戦略研究所の「Web Equity(ウェブ エクイティ)2009」の「再訪問意向ランキング」において、トイレタリー・製薬業界でNo.1になっています。

 以前、同社に転職した元同僚も言っていましたが、消費者と真摯に向き合い、目先の利益を追わず、腰をすえて取り組む生真面目な社風がWebサイト全体、そしてピカママにも現れているようです。

※以上の内容は、「ad:tech tokyo 2009」のセッション「広告主によるブランドコミュニティの必要性」(2009年9月2日)における石井龍夫氏(花王Web作成部長)のプレゼンテーションを元にしました。(松尾順)

 →松尾順氏のバックナンバー

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