“リーク依存症記者”が増殖中……その功罪とは相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年09月10日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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 一昔前、国際金融畑で著名な政府関係者に対して取材が殺到した際のこと。ワイン通としても知られる高官は、夜回りに駆け付けた記者に対し、「○×年のシャトー・ラフィット(フランス産の超高級ワイン)、まだコレクションしていないんだ」と言い放った。当時の番記者たちが競って希少なワインを携え、翌日の夜回りに向かったのは有名な話。

 また、こんなケースもあった。東証の記者クラブの会見場で某大手企業の決算が発表された。会見直後、某大手経済メディア記者が会見した担当役員に歩み寄り、堂々と何らかのペーパーを受け取った。翌日の同紙朝刊には、紙を受け取った記者が書いた企業の新事業に関するネタが一面トップに載っていた。

 当コラムでは数回、昨今の広告不況で記者たちが自由にモノを言えなくなっている現状に触れてきた(関連記事)。こうした下地があるところに、リーク依存症の輩が増加するに従って、企業、あるいは役所の言い分をそのまま載せていると思わせる記事が増えていると筆者は懸念している。

 筆者は記事がどういう過程で生み出されたのかある程度想像することができ、かつ確認する術を持っている。だが、一般の読者にはこうした情報を得ることはできない。販売部数が落ちた、あるいは報道番組の視聴率が芳しくないと嘆く前に、自らの情報入手経路を見直すのもメディア界の重大な任務だと言ったら言い過ぎだろうか。

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